2020 年企業法に基づく株式会社における取締役会の会合の主な要素と開催手順
2024/08/19
はじめに
近年、合弁形態で株式会社の法人形態を選択する会社も増えてきている。取締役会は株式会社の管理機関であり、会社を代表して戦略策定、方針策定、管理監督、株主総会に対する説明責任の遂行に関する、各業務遂行の権限を有する。したがって、取締役会の会合は、会社の運営・管理の過程において重要な意思決定を行うタイミングとなる。しかし、多くの株式会社では会合に関する要素や手順等がよく理解されておらず、適切な開催手順を経ないまま開催されている場合も多い。そこで本稿では、取締役会の会合の要素や開催手順について説明する。
I. 取締役会の会合の開催が必要となるケース
以下のケースで取締役会の会合の開催が必要となる。
取締役会の会長を選任するための最初の会合である。当該取締役会の選挙が終了した日から 7 営業日以内に行われ、選任の際に最多数又は最多割合の票を得た取締役によって招集・主宰される。
取締役会の会合は少なくとも四半期に 1 回開催され、臨時会の開催も可能である。取締役会の会長は、以下のいずれかの場合には、取締役会の会合を招集する。
(i) 監査役会又は独立取締役の要請があるとき。
(ii) 社長若しくは総社長又は少なくとも 5 人のその他の管理者の要請があるとき。
(iii) 少なくとも 2 人の取締役の要請があるとき。
(iv) 会社の定款が規定するその他の各場合。
上記の要請は書面により、目的、取締役会の権限に属する討論及び決定すべき事項を明記しなければならず、特に取締役会の会長は要請を受けた日から 7 営業日以内に、会合を招集しなければならない。会長が開催しない場合には要請をした者は、取締役会の会長にかわって会合を招集する権限を有する。
II. 取締役会の会合の主な要素
1. 出席者
会合の出席者は通常以下のとおりである。
(i) 取締役
原則として取締役は会合に出席しなければならないが、場合によっては取締役の多数の承認を得て会合への出席及び議決を他人に委任することができる。
(ii) 監査役
組織機構に監査役会が存在する場合には、監査役は取締役会の各会合に出席する権限を有し、討論する権限を有するが、議決をすることはできない。
2. 決議事項
会合で討論され、決議されるのは主に戦略策定、方針策定、管理監督、株主総会に対する説明責任である。詳細は2020年企業法の第153条に規定されている。
3. 取締役の会合が開催される条件
会合は取締役総数の4分の3以上の出席があれば開催できる。ただし、前述の開催条件を満たさない場合でも、取締役会の半数が出席すれば第2回会議を開催することができる。
取締役会の会合の開催手順
手順 | 作業内容 | 担当 | 期限 | 留意 |
ステップ1:準備 | 議事次第、内容、参照資料を準備する | 取締役会の会長
|
会社の定款に別段の規定がある場合を除き、開催日の遅くとも3営業日前まで | 会社の書記が準備をサポートする |
会合の開催日時と場所を確定する | ||||
ステップ 2:
会合の招集 |
会合の招集通知と会合で使用する各資料、議決票を取締役に送付する
|
取締役会の会長
|
会社の定款に別段の規定がある場合を除き、開催日の遅くとも3営業日前まで | 招集通知の内容には開催時間、開催場所、議事次第、討論及び決定する各事項を明記する必要がある
招集通知は、招待状、電話、ファクシミリ、電子的手段又は定款が規定するその他の方法により送付されるが,各取締役に確実に届かなければならない |
ステップ3:
会合の実施 |
会合を開会する | 会合の議長 | 会合の開始直後 | |
会合の議事次第及び内容を承認する。 | 会合の議長 | 会合終了後 | ||
討論、意見表明、議決を行う | 取締役 | 会合の実施中
郵便により会合に議決票を送付する場合、遅くとも開始の 1 時間前に取締役会の会長に届けられなければならない |
投票は直接、オンライン会議、郵便、ファックスなどで行うことができる | |
会合の決議を採択する。 | 取締役会 | 会合終了前 | 取締役会の決議、決定は、会合に出席した取締役の多数が賛成したときに採択される
票数が等しい場合、 取締役会の会長と同意見の側が最終決定となる |
|
ステップ4:
会合の議事録の作成および承認 |
議事録を作成する | 書記 | 会合終了前 | 内容は2020年企業法の第158条第1項に基づく
ベトナム語及び外国語で作成することができ、同等の法的効力を有する |
議事録への承認を行う | 取締役会 | 会合終了前 | ||
議事録に署名する | 取締役会の会長
書記 |
会合終了前 | ||
ステップ5:開催後の手続きの実施 | 議事録と会合で使用された資料を保存する | 書記 | 会合終了後 | 会社の本店で保存する |
おわりに
株式会社の適切な運営・管理のため、取締役会開催の主な要素や手順を理解することは大切である。本稿がその一助になれば幸いである。
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