Reportレポート

台風被害など自然災害に伴い発生する費用の税務上の扱い

2024/09/27

はじめに
 2024年9月、ベトナム北部では台風ヤギが直撃し、多くの被害が出ております。日常生活への影響はもちろんのこと、工場の天井や壁が剥がれてしまった、在庫や機械設備が破損してしまった、サプライヤーから物品が届かない、、、といったように企業活動にも多大な影響が出ていると感じています。また、従業員の自宅が浸水してしまったり、通勤路が冠水してしまったという状況も多くあったかと思います。このような状況を踏まえ、今回は自然災害時に会社で発生する費用の税務上の扱いについて説明します。

 

1.  自然災害による損失額
 自然災害により会社が損害を被った場合、以下原則に基づき損失額は法人税上損金算入として認められます。
・ 自然災害による損失額を自社で算定できる。
・ 損金算入が認められるのは、損失額から保険会社や各団体・個人から受け取る補償額を差し引いた金額となる。
必要書類は以下の通りです。

必要書類
自社で作成した破損した資産や商品の目録(以下内容を記載すべき)
 + 破損した資産や商品の価値、損失の原因、損失に対する責任の所在
 + 回復可能な資産および商品の種類、数量、価値
 + 企業の代表者が署名した破損品の在庫管理表
保険会社による補償が認められた場合の補償請求書類(ある場合)
補償責任を負う団体・個人に関する書類(ある場合)
税務局が要求するその他の資料(資産の購入価格、減価償却計算表、損失の原因を示すカメラ映像等)

 

2. 従業員への支援
 被災した従業員を支援する場合、会社は以下の方法を検討できます。

(1) 労働組合からの支援
 会社に労働組合がある場合は、労働組合が被災した組合員に対して手当を支給できることが通常です。この度の台風ヤギについては、労働組合は身体・財産上損害を受けた組合員に対して手当を支給でき、支給額の上限は組合員の被災状況に応じて1人あたり100~1000万 VNDです。労働組合は上位組織である地区の労働組合に支給方法や対象従業員ごとの具体的な支給額を確認すべきです。当支給額が個人所得税上の課税対象外となるかは法令上不明確ですが、現状の税務局の見解としては課税対象外として考えられています。

(2) 会社からの支援
 被災した従業員に臨時の災害手当を支給することも可能です。この災害手当を法人税上の損金算入とみなすためには、労働契約、集団労働協約、または会社の財務規程に支給対象や支給条件、具体的な支給額が明記されている必要があります。また、できる限り手当の支給が妥当であることを示す証跡も用意しておくべきです。たとえば、手当の受給対象者リスト、受給対象者が受給条件を満たしていることを示す資料などです。個人所得税上は当手当は課税対象です。

 

3. 災害復旧支援
 災害復旧支援金・支援物資は以下いずれかの場合に法人税上の損金算入として認められます。
・企業が災害復旧のために法的に設立された団体・企業に現金または物品を寄付する場合
・災害復旧支援を行う機関や団体を通じて個人に寄付する場合
必要書類は以下の通りです。

必要書類
寄付を行う企業の代表者と、寄付を受け取る機関・企業の代表者の双方が署名した寄付の確認書(法令上のフォーム有)
物品を寄付する場合は支払時の証票(2,000万VND以上の場合は銀行振込などによる支払支払証憑)
※税務局は災害による実際の損害について被災者が所在する地方政府に確認を求めることがある

 

おわりに
 簡潔とはなりますが少しでも参考になれば幸いです。各社それぞれの状況があるかと思いますので、具体的には自社の経理担当者や弊社のような外部の専門家にご相談いただくことをお勧めします。

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