Reportレポート

申告漏れ仕入VATの修正申告手順に関する解説

2024/12/20

はじめに

仕入VATインボイスの申告漏れは、企業の税務申告時によく発生する問題の一つであり、企業の税務申告の金額にも影響を与える。本レポートでは、仕入VATの申告漏れが発覚した場合の申告方法および追加控除について解説する。本レポートが税務リスクを回避するための一助となれば幸いである。

 1. 仕入VATの申告と控除の原則、及び申告漏れがある場合の修正申告

仕入VATの申告と控除の原則
原則的に、当期に発生した仕入に係るVATは、使用済みであるか在庫として残っているかどうかを問わず、仕入が発生した期において申告、控除を行うべきとされている

過去は、通達156/2013/TT-BTC(2022年1月1日失効)と税務総局のオフィシャルレターNo. 4943/TCT-KKの案内に基づき、申告漏れが発覚した期において追加申告・控除が可能であるものの、税務署等による税務調査の決定通知が下される前に行う必要があるとされていた。

しかし現行規定では、政令No. 126/2020/ND-CP(2020年12月5日発効)に基づきVATインボイスの申告漏れにより、税務当局に提出済みの申告書に誤りがあることが判明した場合、納税者は過去の誤った申告書を修正する必要がある。すなわち、申告漏れのVATインボイスは発覚したタイミングではなく、仕入VATインボイスが発生した各期において修正申告を行う必要がある。

税務調査や税務検査の決定通知が下される前の修正申告
修正申告時の税務義務の変更に応じて以下のように異なる。
・ 修正申告により追加納付、または還付税額の減少による過大還付が発生することになる場合追加納付額または還付された超過税額に加え、延滞利息を納付しなければならない
・ 修正申告により追加納付が発生せず、単に次期へ繰り越す控除可能な仕入VATの額が増減する場合は、当期の申告書上の「増加調整」「減少調整」の各項目にそれぞれの増減額を記載のうえ申告する必要がある。また将来的に還付申請予定の仕入VAT額が増加する場合は、次期申告書や還付申請書が未提出のタイミングで修正申告を実施しなければならない。

税務調査や税務検査の決定通知が下された後の修正申告
税務当局と管轄機関が税務調査・検査の決定通知を下した後でも修正申告の実施は可能とされているが、申告漏れによる追加納付や過大還付などが発生した場合、税務管理上の違反行為として追加で行政罰金が発生することに留意する必要がある。

税務調査、税務検査実施後の修正申告
税務当局や管轄機関による税務調査・検査結果と処理決定の通知後に、過去の申告漏れが発覚した場合、修正申告は以下のように行われる必要がある。納付税額が減少する場合については、前述で説明した調査実施前とは異なる点に留意が必要である。
・ 追加納付が発生または控除額・還付申請可能な額が減少する場合:修正申告は認められるが、追加納付の発生や過大還付については、行政罰金が課される。
・ 納付税額が減少または控除・還付申請可能な額が増加する場合:修正申告は認められず、税務に関する異議申し立ての規定に従って行い手続きを実施する必要がある。

2. 申告漏れVATインボイスの発生原因及び改善方法

社内の部門間でインボイス情報が十分に共有されていない場合、申告漏れが発生しやすい。また取引量が多い企業では、人員不足が原因でインボイスの確認作業が遅延してしまうことがある。またサプライヤーによるインボイス発行が遅れる場合もあるが、これらの場合には申告漏れに繋がるリスクが高まるため留意が必要である。

申告漏れの防止にあたっては、VATインボイスの確認と会計帳簿との照合が重要になる。それ以外にも専用のソフトウェアやシステムの導入、社内の各部門間でのVATインボイスの共有、サプライヤーとの定期的な債務債権の照合などにより、申告漏れのリスクを減らす体制を整えることで改善につながると考えられる。

おわりに
企業は税務上のリスクを回避するために、VATインボイスを適切に管理し、適切なタイミングで申告する必要があり、未申告が発覚した場合には、適時に該当期において修正申告を行う必要がある。適切な期に修正申告を行わない場合、将来の税務調査等において問題となり、税務当局への説明など事務負担を増大するとともに、将来的な仕入VATの還付処理に影響を及ぼすリスクがあることに留意が必要である。

参考資料

  • 2019年6月13日の税務管理法第38/2019/QH14号
  • 2020年10月19日の政令126/2020/NĐ-CP号
  • 2013年12月31日の通達219/2013/TT-BTC号
  • 2023年6月22日のオフィシャルレター2546/TCT-CS号
  • 2023年6月27日のオフィシャルレター2397/CTBNI-KKKTT号
  • 2015年11月23日のオフィシャルレター4943/TCT-KK号

 

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