Reportレポート

ギフト・贈答品の仮受 VAT に関する法人税上の取り扱いについて

2023/05/15

  • Le Ngoc Quoc Bao

はじめに
 生産・営業活動の過程で、各企業は売り上げや市場の拡大、顧客との関係の維持のため、販売ポリシーおよびプロモーションポリシー等に関連した優遇措置を実施することがある。企業がよく使用する手法の1つとして、顧客への商品の贈答や無償でのサービス提供が挙げられる。現行の税法によると、販売促進活動に関する法律の内容に基づいて実施したケース以外で、顧客に商品の贈答や無償でのサービスを提供した場合、企業はVAT(付加価値税)インボイスを発行する必要がある。また、仮受VATを計上し、費用として処理する必要がある。
 本稿では、ギフト・贈答品の仮受VATに関する法人税上の取り扱いについて説明する。

ギフト・贈答品に関する税務上の規定
1.  ギフト・贈答品に関するインボイスおよびVATの規定
 下記のような目的で商品・サービスを提供する場合はVATインボイスを発行する必要がある(政令123/2020/ND-CPの第4条)。

・販売促進、広告、サンプル配布といった目的で提供される商品・サービス
・従業員への贈答、従業員に対する給与の支払い、内部で使用される商品(生産目的で使用されるものは除く)
・レンタル、貸与目的で提供される商品

 外部から購入したもの、または自社で製造したものを含め、上記の商品・サービスの課税価格は、贈答等を行うタイミングにおける同じ種類の商品・サービスの価格となる(通達219/2013/TT-BTC第7条)。
 したがって、企業が現行の販売促進活動に関する法律の範囲外で、顧客へ商品を贈答したり、無償でサービスを提供する場合、会社はVATインボイスを発行し、VATを計算・申告する必要がある。

2. ギフト・贈答品における法人税上の規定
 現行の法人税の規定によると、下記の条件をすべて満たした費用は、法人税の計算の際に損金算入が認められる。

・会社の事業活動に関係がある費用であること
・VATインボイスや契約書などの法令に規定されている必要な証憑を提出できること(通達96/2015/TT-BTC第4条より改正された通達78/2014/TT-BTC第6条)
・2,000万ドン以上の支払いの場合、現金以外で決済を行っていること、およびその支払い証憑を提出できること

 ギフト・贈答品については、明確な規定は存在しないが、下記の条件を満たした場合に損金算入が認められると考えられる。

・売り上げや市場の拡大、または顧客との関係を維持する目的でギフト・贈答品を提供した場合(会社の事業活動に関係がある費用としてみなされると考えられる)
・ギフト・贈答品を外部から仕入れたケースで、現行の法令に規定されている必要な証憑(仕入時VATインボイスや契約書等)などを適切に入手している場合
・贈答を行う際、適切にVATインボイスを発行している場合

 上記の点は、税務総局も同意している内容であった。しかし、2022年5月16日に税務総局より発行されたオフィシャルレターNo.1585/TCT-CSによると、ギフト・贈答品を提供する際に発行するVATインボイス上のVAT金額は、実際には受領しないものの、現行の法令上でも損金算入の扱いとするか不明確である旨が記載されている。このオフィシャルレターの内容に基づき、実際に税務調査でギフト・贈答品の仮受VATが損金不算入として指摘されたケースも存在する。

おわりに
 ギフト・贈答品の仮受VATの取り扱いについては、さまざまな税務上の観点がある。通常、税務調査は、税務総局発行のオフィシャルレター等の内容に基づいて実施されるが、ルールが不明確なため損金不算入となるリスクが一定程度、存在する。将来の税務リスクを回避するために、企業は金額的に重要性の高いギフト・贈答品の提供が頻繁に発生した場合、税務総局に問い合わせのオフィシャルレターを提出し、確認することを推奨する。

参考
2020年10月19日付 政令123/2020/ND-CP
2013年12月31日付 通達219/2013/TT-BTC
2014年6月18日付 通達78/2014/TT-BTC
2015年6月22日付 通達96/2015/TT-BTC
2022年5月16日付 オフィシャルレターNo.1585/TCT-CS

本レポートに関する
お問い合わせはこちら