Reportレポート

株式会社の管理組織機構について

2022/10/27

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 前回の一名有限責任会社と二名以上有限責任会社の管理組織機構についてのレポートに続き、本レポートでは、株式会社の管理組織機構を紹介し、その特徴を解説する。

1.株式会社の定義
 ベトナム企業法において、株式会社とは以下の通り定義されている。

株式会社は、企業であり:
1) 定款資本が株式と呼ばれる均等な多数の持分に分けられている。
2) 株主には組織、個人がなり得る。株主は最低3名とし、最大数は限定しない。
3) 株主は、債務及びその他の企業の財産義務につき、企業に出資した額の範囲内で責任を負う。
4) 株主は自己の株式を他人に自由に譲渡できる権利を有する。ただし、企業登記証明書の発給を受けた日から3年以内の間、発起人の株式は他の発起人に自由に譲渡できるが、発起人でない者に譲渡できるのは株主総会の承認を得た場合のみである。
5) 株式会社は、資本を調達するためにあらゆる種類の株式を発行する権利を有する。

2.株式会社と二名以上有限責任会社の管理組織機構及び各組織の権利と義務の比較
 株式会社と二名以上有限責任会社は、どちらも多くのメンバーが会社に資本を拠出するタイプの企業形態であり、出資者は、出資された資本の範囲内で会社の負債と財産に対してのみ責任を負う。これら2つのタイプの構成を比較する。

① 二名以上有限責任会社の管理組織機構


二名以上有限責任会社は、出資者が2名以上、最大50名までの有限会社である。

② 株式会社は、次の2つのモデルのいずれかに基づいて、管理組織機構を選択する権利を有する

3.各管理組織機構の役割と権限
 株式会社の各管理組織機構には、異なる権利と義務がある。 以下にて詳しく説明する。

① 株主総会
 株主総会は、会社の議決権を持つ株主全員で構成される株式会社の最高意思決定機関である。 株主総会の権利と義務は以下の通りである。
a) 会社の発展の方向付けを採択する;
b) 引受募集対象株式の種類及び種類ごとの株式総数を決定する。株式の種類ごとの毎年の配当額を決定する
c) 取締役、監査役の選任、任免
d) 会社の定款が異なる割合又は価額を規定する場合を除き、会社の直近の財務報告書に記録されている財産の総額の35パーセント以上の価額を有する財産の投資、売却を決定する
e) 会社の再編、解散を決定する;
f) 企業法及び会社の定款の規定に従ったその他の権限及び義務を有する。

② 取締役会
 取締役会は会社の管理機関であり、会社を代表し、株主総会の権限下にない会社の権利の行使と義務を履行する。3名以上から11名以下のメンバーで構成され、取締役の任期は5年を超えないが、回数制限なく再任することができる。取締役会のすべてのメンバーが同時に任期を終了した場合、それらのメンバーは、新しいメンバーが選出されて職務を引き継ぐまで取締役会のメンバーとして在籍する(会社の定款に別途規定がある場合を除く)。

取締役会の権利と義務は以下の通りである。
a) 会社の中期発展戦略、計画及び年次経営計画を決定する
b) 株式の種類ごとの引受募集対象株式数の範囲内で、未発行株式の発行を決定する。他の形式による出資の呼び込みを決定する
c) 株主総会決定権限に属する契約、取引を除き、会社の直近の財務報告書に記載された財産の総額の35パーセント以上の価額の売買、消費貸借及びその他の契約、取引を承認する
d)取締役会会長の選任、任免。社長又は総社長及び会社の定款で規定する、その他の重要な管理者の選任、任免、契約の締結と終了。これらの管理者の給与、報酬、賞与及びその他の利益の額を決定する。他の会社の社員総会又は株主総会に出席する委任代表者を選定する。これらの者の報酬及びその他の利益の額を決定する;
e)会社の組織機構、内部管理規則を決定し、子会社、支店、駐在事務所の設立及び他の企業への出資、株式の購入を決定する

③ 社長・総社長
 社長又は総社長は、会社の日常的な経営業務を担う者であり、取締役会によって任命される又は労働契約により雇用される。社長又は総社長の任期は5年を超えないものとするが、回数の制限なく再任が可能である。社長又は総社長は、取締役会と監査役の監督下に置かれ、会社の法定代表者となる場合もある。
 社長又は総社長は、法令、会社の定款、会社と締結した労働契約の規定及び取締役会の決議、決定に従い、会社の日常的な経営業務を行わなければならない。会社の各管理職を選定、任免する。ただし、取締役会の権限に属する役職を除く。社長又は総社長の任命権限に属する管理者を含む、会社の労働者に対する給与及びその他の利益を決定することを含む。

④ 監査役会
 監査役会は会社の経営管理において取締役会、社長又は総社長を監督し、株主総会に対して割り当てられたタスクの実行について説明責任を負う。監査役会は3名から5名の監査役を有し、監査役の任期は5年を超えないが、回数の制限なく再任が可能である。

監査役会は、次の事項を実行する。
a) 監査役会は、取締役会、社長又は総社長による会社の管理及び運営を監査する;
b) 経営活動の管理、運営における合理性、合法性、誠実性及び慎重さの程度;会計、計算の処理及び財務報告書の作成における体系性、一貫性、整合性を検査する
c) 経営状況報告書、会社の年次及び半期の財務報告書、取締役会の管理業務評価報告書の十分性、合法性、誠実性を審査し、株主総会の年次総会において審査報告書を提出する。取締役会又は株主総会の権限と関連性を有する関係者との契約、取引を精査し、取締役会又は株主総会の承認が必要な契約、取引について勧告をする
d) 会社の内部監査、内部会計監査、リスク管理及び早期警戒の体系の効力と効果を精査、検査及び評価する
e) 会社の経営活動の管理、監察及び運営の組織機構の修正、補充、改善の方法を取締役会又は株主総会に提案する。
f) 株主総会、取締役会、会社のその他の会合に出席して討論に参加する。

4. おわりに
 上記で述べたとおり、ベトナムへの進出検討にあたり、投資家は適切な選択を行うため、まず企業形態とその管理組織機構を理解することが重要である。投資を検討されている企業または個人におかれては、前回のレポート及び本稿を活用いただければ幸いである。

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