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非現金決済証憑の条件に係る税務上の留意点

2024/07/06

  • Mai Thi Dung

はじめに
 非現金決済は、ベトナムにおいて、付加価値税(VAT)の控除および法人税(CIT)の損金算入のための必須条件の1つである。しかし、詳細な適用範囲や条件を満たす支払い方法を十分に理解している企業は多くはないのが実情である。本稿では、企業が適用する際の理解をより深めてもらうため、非現金決済の条件や留意点について解説する。

1.各税金における非現金決済方法の条件
1.1付加価値税(VAT)
 非現金決済は、仕入VAT控除を申告および適用するための条件の1つである1。輸出財・サービス、またはみなし輸出にVAT税率0%を適用する際にも、銀行送金証憑が必要である2。そのため、相殺決済や代行決済を行った場合、VAT税率0%の適用が認められないリスクがある点に留意してほしい。

1.2法人税(CIT)
 非現金決済は、CITの課税所得を算出する際に損金算入できる費用の「3つの条件」のうちの1つである3
なお、「3つの条件」は以下の通りである。
・レッドインボイス等の適切な証憑があること
・会社の事業活動に関係がある費用であること
・VAT込みで2,000万ベトナムドン(VND)以上の取引について、非現金決済されていること

2.非現金決済とは
 非現金決済とは、資産や同等の価値のある証明書等、現金以外の手段による支払い方法のことである。現在、消費者と販売者の多くは、信用機関(銀行)を通じて現金を使わずに相互に取引や支払いを行っている。なお、2,000万VND以上(VATを含む)の仕入財・サービス(輸入品を含む)の取引の際は、非現金決済する必要がある。

3.非現金決済証憑
 非現金決済証憑には、銀行決済証憑およびその他の非現金決済証憑が含まれる4

3.1銀行決済証憑
 銀行決済証憑とは、買い手の口座から売り手の口座への送金を証明する証憑である。銀行決済証憑には、以下の種類がある。
・小切手、出金伝票、出金通知、入金伝票、入金通知、キャッシュカード、クレジットカード、SIMカード(電子ウォレット)
・私人企業主の名義の口座への振込証明書
・私人企業主の名義の口座からの振込証明書
(注)買い手が売り手の銀行に直接赴き、現金で入金手続きを行った場合、当該入金証憑(入金通知書等)は非現金決済の証憑として認められないため、留意が必要である。

3.2その他の非現金決済証憑
 上記の銀行決済証憑以外にも、適切な証憑があれば、場合によっては非現金決済方法として認められるものがある。具体的な証憑は次の通りである。

●購入した財・サービスの価額と販売した財・サービスとで相殺決済する場合
・相殺決済方法が定められている契約書
・相殺決済に関する相互間のデータ参照・確認記録書
・第三者を通じて売買取引する場合、三者間相殺合意書等

●ローン、借金等と相殺決済する場合
・相殺決済方法が定められている契約書
・書面によるローン(借金)の契約書
・現金でのローン(借金)の場合、貸し手の口座から借り手の口座に送金した際の送金伝票

●第三者による銀行送金での代行決済の場合
・第三者による代行決済方法が定められている契約書
・第三者の口座から売り手の口座に送金されたことを証明する送金伝票

●売り手が買い手に対し、売り手が指定した第三者へ銀行送金決済を依頼する場合
・売り手の指定した第三者への銀行送金決済方法が定められている契約書
・買い手の口座から売り手が指定し、受取者に送金した際の送金伝票

4.非現金決済条件に関する税務上の留意点
①1回あたり2,000万VND以上の財・サービスを購入し、その一部を非現金決済、残りを現金で決済する場合、仕入VATの控除はできず、CITの計算上も損金不算入となる。

②サプライヤーからの財・サービスの購入が1回あたり2,000万VND未満であっても、同日に複数回購入し、合計で2,000万VND以上になる場合は、損金算入のために銀行送金証憑が必要になる。

③購入した財・サービスの決済を分割払いまたは後払いで支払っている場合で、購入時に仕入VATを控除したものの、支払い時に現金で決済した場合は、一度控除した仕入VATを取り消す必要がある。

④インボイス金額が1回あたり2,000万VND以上の財・サービスを購入する場合で、費用計上の時点で企業がまだ支払っていない場合でも、適切なインボイスを入手していれば、CITの計算上損金算入が認められる。しかし、その後、支払い時に現金で決済した場合は、一度損金算入した費用は、損金不算入として調整する必要がある。

おわりに
 本稿では、非現金決済証憑に関する条件について説明した。企業が会計基準および税法を順守しつつ、決済証憑に関する問題を解決するための指針として、本稿を税務リスク回避のために役立てていただければ幸いである。

1 通達26/2015/TT-BTC(2015年2月27日)第1条第10項および通達173/2016/TT-BTC(2016年10月28日)
2 通達219/2013/TT-BTC(2013年12月31日)第9条第2項
3 通達96/2015/TT-BTC(2015年6月22日)第4条
4 通達26/2015/TT-BTC第1条第10項および通達173/2016/TT-BTC

M000112-184
(2024年6月12日作成)

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