違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に関するリスク
2023/12/22
- 米国公認会計士
- 逆井将也
1 違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用の定義
2022年10月19日付の政令123/2020/ND-CP第3条9項により、違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用について、以下の通り規定されている。
違法インボイスの使用 | インボイスの不正利用 |
偽造インボイス・書類を使用する。 法令で定められた内容を記載していないインボイス・書類を使用する。 | 法令で定められた内容を記載していないインボイス・書類を使用する。また、法令に従わずに削除・修正したインボイス・書類を使用する。 |
有効性がない、または有効期限が切れたインボイス・書類を使用する。 | 実際に取引が発生しているが、インボイスの内容(数量・金額などの内容)の一部または全部を誤って発行する。また、そのインボイスを使用する。 |
インボイスの強制的な使用禁止期間中にインボイスを使用する。(税務局の通知により使用が認められる場合を除く) | 偽造インボイスを発行する。 実際に取引は発生していないが、インボイスを発行する。 |
税務局に未登録の電子インボイスを使用する。 | 金額や数量などの内容を故意に修正したインボイスの原本または控えを使用する。 |
税務局のコード付電子インボイスの導入企業が、コードなし電子インボイスを使用する | 商品を輸送する場合のインボイスについて、この商品・サービスの情報を証明するために 別途の商品・サービスのインボイスを提示する。 |
税務局が、登録された事業所住所で事業活動していない販売者リストの公布日後に、企業が該当販売者との商品・サービスの購入用インボイスを引き続き使用する。 | 商品・サービスの購入または販売を合法化するため、他の企業および個人のインボイス・書類(税務局から委任されてインボイス発行を承認された場合を除く)を使用する。 (例: A 社から商品を購入したが、B 社がインボイスを発行した。) |
税務局が、登録された事業所住所で事業活動していない販売者リストの公布日前に、企業が該当販売者との商品・サービスの購入用のインボイスを使用する。または、企業は販売者が登録された事業所住所で事業活動していないことを知らないが、税務局、公安局またはその他の当局が該当インボイス・書類が違法だと判定したものを使用する。 | 税務局、公安局またはその他の当局がインボイス・書類の不正利用であると判定したものを使用する。 |
2 違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に関するリスク
2.1 行政罰金について、
税務およびインボイスに関する行政罰金は政令125/2020/ND-CPに以下のとおり規定された。
No. | 行為 | 行政罰金と是正措置 準拠法 | 準拠法 |
1.違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用 | 上記の1による違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用(政令125/2020/ND-CPの第16条1dd項および第17条1d項に規定されたケースを除く) | ・行政罰金:2~5千万 VND ・是正措置:使用したインボイスを強制的に廃棄させる。 |
政令 125/2020/ND-CP 第 28 条 |
2. 本政令の第16条1dd 項(誤申告の行為) | 違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に基づいて会計計上し、支払うべき税額の減額や税金の還付・免除・減額の金額増加が発生する行為。税務局が監査・調査を通じて発見した場合、購入者は規定に従い十分に会計計上することができ、違法インボイスを使用する行為が販売者に帰属することを証明できる。 | ・行政罰金:未申告分の20%、または税金の還付・免除・減額の金額が規定より高い際の差額 ・ 是正措置: – 未納税および延滞利息を納付し、差額分を返済する。(行政罰金の制裁有効期限が切れた場合は行政罰金を課されないが、未納税および延滞利息を納付し、差額分を返済する) – CIT申告書の損益データを調整し、VAT申告書の仕入VATの控除可能分を次期に調整する。(ある 場合) |
政令 125/2020/ND-CP 第 16 条 1d・2a 項 |
3. 本政令の第17条1d 項 (脱税行為) |
違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に基づいて会計計上し、支払うべき税額の減額や税金の還付・免除・減額の金額増加が発生し、それが脱税行為とみなされる行為。 | ・行政罰金: ‐情状酌量が1つ以上ある場合: 行政罰金=脱税金額 ‐情状酌量または悪化要因がない場合: 行政罰金=1.5×脱税金額 ‐悪化要因が1つある場合: 行政罰金=2×脱税金額 ‐悪化要因が2つある場合: 行政罰金=2.5×脱税金額 ‐悪化要因が3つある場合: 行政罰金=3×脱税金額 ・是正措置: ‐脱税金額および延滞利息を納付する。 (行政罰金の制裁有効期限が切れた場合は行政罰金を課されないが、脱税金額および延滞利息を納付する) ‐CIT申告書の損益データを調整し、VAT申告書の仕入 VAT の控除可能分を次期に調整する。(ある場合) |
政令 125/2020/ND-CP 第 17 条 1d・2・3・4・5・6 項 |
2.2 仕入VATの控除
通達219/2013/TT-BTC第15条1項では、仕入VATを控除できる条件は以下のように規定されている。
「合法な仕入VATインボイスがあり、輸入品に対するVATの支払い証憑がある。また、ベトナム法人資格を持たない外国組織およびベトナムで事業を行うことで収入を得ている外国組織を代理人としてVATを支払う場合はVATを代行納付した証憑がある。」
したがって、違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に関する仕入VATは控除できないリスクがある。
2.3 法人税(CIT)の損金算入可否
通達78/2014/TT-BTC第6条1項では、CIT上の損金算入として取り扱われる条件は以下のように規定されている。
「本通達の第6条2項に規定される費用を除き、以下の条件をすべて満たす場合、当該費用はCITの損金算入とみなされる。
a) 企業の生産・事業活動に関して実際に発生した費用
b) 法令に則った合法インボイスや書類がある費用」
したがって、違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に関する費用はCITの損金不算入とみなされるリスクがある。
3 違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用に関する留意点
3.1 企業が使用した仕入VATインボイスが不正インボイスの使用およびインボイスの不正利用である場合の取扱い
No. | 仕入 VAT インボイスを受領する側の取扱い | |
1.販売側が逃亡・失踪・解散した日より前にインボイスが発行された場合 | 実際に取引が発生したことおよび関連インボイスや書類が十分にあることを税務局に証明する。必要な書類は以下の通りである。 ・インボイス、売買契約書、解約書(ある場合)、引渡書/納品書、出庫伝票/入庫伝票 ・支払い証憑 ・税務局へのオフィシャルレター(企業が使用した仕入VATインボイスは違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用ではない旨の説明書として準備する) 上記の説明が認められれば、当該仕入VATを控除でき、当該費用を CITの損金算入として計上できる。 ただし、税務総局は、税務局へオフィシャルレターを送付し、各企業のインボイス使用状況を確認するよう要求することが多い。税務局は、最近の税務調査時に企業が法令に則ったインボイスを使用しているかを厳格に調査していることから、企業の説明書/オフィシャルレターを簡単に承認しないことが予想される。 |
|
2.販売側が逃亡・失踪・解散した日より後にインボイスが発生された場合 | VAT控除の申告およびCIT確定申告をまだ実施してしない場合 | ・法令違反の疑いがあるインボイスに対して、VAT控除の申告および CIT確定申告を一時的に停止する。 ・管轄当局からの正式な結果を待つ。 ・法令違反の疑いがないインボイスのみ、VAT控除の申告およびCIT確定申告を行う。 |
VAT控除の申告およびCIT確定申告を既に実施している場合 | ・控除したVAT分を減少調整する。 (当調整により企業が納税すべきVAT金額が追加発生する場合、またはVAT還付後に税務調査を受けて還付金額を調整される場合は、追徴額および延滞利息を課される。) ・損金算入として処理した分を損金不算入へ修正する。 (当調整により企業が納税すべきCIT金額が発生する場合は追徴額および延滞利息を課される) |
3.2 違法インボイスの使用およびインボイスの不正利用のリスクを防止するための対策
・信頼性の高い販売者を選択して取り引きする。
・税務総局のホームページ(gdt.gov.vn) で販売者の情報を検索する。また、インボイス情報ポータル( tracuuhoadon.gdt.gov.vn) で販売者が発行したインボイス情報を検索・確認する。
・実際の取引が行われたことを証明するため、完全な書類と証憑を準備して保管する(インボイス、売買契約書、解約書(ある場合)、引渡書/納品書、出庫伝票/入庫伝票、支払い証憑など)。
・税務リスクが高い企業リストと販売者の所在地域における税務局からのインボイスの使用禁止リストを確認する。
・飲食、ホテル、運送などの業種からのインボイスはリスクが高いので、特に注意が必要である。
・税務局システムと連携する会計ソフトの入力インボイスのチェック機能を活用する。
参考法令
・政令123/2020/ND-CP
・政令125/2020/ND-CP
・通達219/2013/TT-BTC
・通達78/2014/TT-BTC