Reportレポート

外国人労働者が退職する際の労務面の留意点

2023/09/18

  • Nguyen Thi Thuy Nhi

 企業管理と運営の効率を向上させるため、ベトナム企業は重要なポジションに外国人労働者を雇用することがよくある。外国人労働者の雇用を開始する際の手続きで、法令順守が求められることはもちろんだが、それに加えて、外国人労働者がベトナム企業での仕事を終える際にも、いくつかの関連手続きを行う必要がある。本稿では、外国人労働者が退職する際に企業が実施する必要がある労務面の手続きを説明する。

法的規制および実務上の慣行に基づき、外国人が退職する際に企業が実施すべき手続きや注意事項は以下の通りである。

1. 解任または労働契約解除の決定
通常、ベトナムで働く外国人は以下の形式となる。
(a)親会社の任命状に基づいて勤務し、ベトナム企業と労働契約を締結しない
(b)親会社の任命状に基づいて勤務し、同時にベトナム企業と労働契約を締結する
(c)ベトナム企業と締結した労働契約のみに基づいて働く(現地採用)

ケース(a):外国人労働者がベトナム企業と労働契約を締結せず、親会社からの任命状だけを持っている場合は、退職する際に親会社が解任状を発行し、ベトナム企業が保管する。

ケース(b)(c):外国人労働者はベトナム企業と労働契約を締結しているため、他のベトナム人労働者と同様に、ベトナム労働法の規定を順守しなければならない。具体的には以下の通りである。

企業と外国人労働者による、労働契約の終了合意書への署名
ベトナム労働法では、終了合意書の詳細な内容については規定されていないが、次の主な内容が含まれている必要がある。
-雇用者と労働者の情報
-締結した労働契約の情報
-労働契約の終了日
-両当事者の責任
-その他の合意事項(該当ある場合)

退職金と未消化の年次有給休暇の支払い1
 特に、退職金については、労働者が12カ月以上連続で勤務した場合、企業は労働契約に基づき、以下の計算に相当する手当を支払う義務がある。

退職月の直前6カ月間の月額給与平均額×勤務期間(失業保険加入期間は除く)×0.5

社会保険上の労働者が減少する旨の申告、および帰国時における社会保険給付金の支払い請求
 労働契約を終了する際、外国人労働者がベトナムで社会保険に加入している場合、企業は社会保険停止手続きを行う。また、外国人労働者が退職した後、ベトナムで働き続けずに帰国する場合、社会保険庁に社会保険給付金の支払いを請求することが可能である。本手続きは労働者自身が実行するか、他者に委任することもできる。ただし、本手続きは社会保険庁とのやり取りとなり(書類の作成や説明など)、かなり時間がかかるため、実施しない人が多いのが実情である。

2. 労働許可証の返却手続き
 外国人がベトナム企業での就労期間を終了した場合、企業は外国人の労働許可証を回収し、発行官庁へ返却手続きを行う必要がある。具体的な手順は次の通りである2

・外国人が退職した日から15日以内に、企業は労働許可証を回収し、返却理由を明記した文書とともに発行官庁に返却する。現行法では文書の形式は規定されていないが、実務慣行上、当該書類には次の内容を記載するべきである。
-企業情報
-外国人労働者情報
-発行された労働許可証情報と返却の理由(退職日を明記することに留意)

・書類の受領日から5営業日以内に、発行官庁は労働許可が返却された確認書を発行する。

 しかし実際には、発行官庁が返却の確認書を発行しないことがあるため、企業は発行官庁をモニタリングし、定期的に進捗を確認する必要がある。より確実にするために、労働許可証を返却する際、2通の返却文書を用意し、1通の返却文書にスタンプの押印と確認を発行官庁に依頼することを推奨する。また、企業が法令に定める義務を履行したことを証明するため、当該書類を保管することを推奨する。

 最近、管轄当局は、労働許可証の発給や返却等の管理を強化している。特に、企業が新たな外国人労働者の労働許可証を申請する際、管轄当局は既に退職した前任の外国人の労働許可証が返却されているかを確認する傾向がある。したがって、労働許可証の申請プロセスに影響を与えないよう、労働許可証の返却手続きを適切に実施するよう留意すべきである。

3. ビザ、レジデンスカードの返却手続き
 外国人労働者がベトナムに合法的に滞在して働くためには、労働許可証に加えて、勤務先を招聘元としたビザ、レジデンスカードを取得する必要がある。したがって、外国人が退職する場合、企業は次の手順に従ってビザ、レジデンスカードを回収し、入国管理局に返却する必要がある3

・有効なビザまたはレジデンスカードが付与されているが、ベトナムに居住し続けることは許可されていない旨を、発行官庁に書面で通知する。

・管轄当局と連携し、外国人に対し所定の期間内にベトナムから出国するよう要求する。なお実務上、以下の順序で実行することが原則である。
(i)外国人がベトナムを出国する前に、企業がビザまたはレジデンスカードを回収し、発行官庁への返却通知書を準備する。
(ii)同時に、外国人がベトナムを出国する準備ができるよう、一時滞在の延長(約15日間)を申請する。
(ビザ、レジデンスカードを返却した後は、一時滞在の延長を行わない場合、ベトナムを出国することができない)

 レジデンスカードを持っている外国人については、多くの場合、上記(ii)の一時滞在延長手続きを省略し、レジデンスカードを使用して出国することが多い。その後、ベトナムにレジデンスカードを送り、発行官庁に返却するケースがよく見られる。

 また、外国人労働者が退職した後、レジデンスカードを使用してベトナムの別の企業で働き続けるケースも散見される。上述のように、企業はレジデンスカードを回収し返却する必要があるため、このようなケースは違法である。そのため、退職後もベトナムの別の企業で働き続ける場合は、一度ベトナムを出国し、新しい勤務先を招聘元とした新しいビザで再入国する必要がある。

おわりに
 本稿では、外国人労働者が退職する際に企業が行うべき労務面の手続きについて説明した。特に、ビザ、レジデンスカードの返却手続きについては、法律上期限が定められておらず、また発行官庁の管理もさほど厳しくないため、多くの企業が見落とす点である。そのため、現行法に従って、適切に手続きを実施するよう留意すべきである。
 上記の労務面の手続きに加えて、企業や外国人は個人所得税手続きも実行する必要がある。この手続きに関する案内や注意事項については、別のレポートで説明する。

参考文献
¹ 2019年付労働法第46条と第113条
² 政令第152/2020/ND-CP号第21条
³ ベトナムにおける外国人の入国・出国・乗継・居住に関する法律第45条2項e

M000111-173
(2023年9月18日作成)

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