Reportレポート

契約違反による賠償に係る税務政策

2024/08/21

はじめに

顧客との信頼関係を維持するためには、賠償に係る税務政策の理解も重要になってくる。企業が顧客と合意した内容を履行できない場合、または製品とサービスが顧客に損害を与えた場合には賠償義務が発生する。実務上、多くのケースは商品の欠陥・破損等、合意内容を満たさなかったことによる賠償である。

税務当局からの指摘を回避するため、顧客への賠償に係る税務上の留意点を遵守する必要がある。本稿では賠償費用に関するVATインボイスの発行、VAT計算、損金処理についての留意点を、主に賠償を行う側に焦点を当てて説明する。

賠償費用に関する税務及びVATインボイスの規定

1. 賠償費用に関する付加価値税 (VAT) の一般規定

賠償金(国家機関の決定によって収用された場合の土地・土地上財産の賠償金を含む)、補助金、排出権の譲渡金およびその他金融収益が発生した場合、以下の対応が必要であることが規定されている。
・上記の金銭を受け取った組織は規定に基づき受領書を発行する。また金銭を支出した組織は金銭の支出の目的に基づき「出金伝票」を発行する。
・金銭ではなく商品・サービスでの賠償となる場合、賠償を行う側は他の商品・サービスと同様にVATインボイスを発行し、申告・納付を行う必要がある。また賠償金の受け取る側は規定に従い、受け取った商品・サービスのVATインボイスを通常の仕入インボイスと同じように処理、仕入VATの控除を行う。

2. 賠償批評に関する法人税 (CIT)の一般規定

以下のような場合は、「その他収入」で処理する必要があり、CIT税率20%の対象となる。
・相手方の契約違反により賠償金を受け取る場合
・自社による契約違反により賠償金が発生しているが、その賠償金額を上回る実績評価に基づく賞与(*)がある場合、相殺後の差額を「その他収入」で処理する。
* 契約書上の業務完了期日よりも早期に完了できた場合や、得意先の期待を超えた業務を提供できたこと等により、得意先から追加の報酬を受領した場合に認識されるものである。

 以下のような場合は、「その他収入」の減算処理、もしくは事業収入の減算処理を行う。
・自社の契約違反により賠償金を支払う場合
・自社の契約違反により賠償金が発生しており、その賠償金額が実績評価に基づく賞与を上
回る場合、相殺後の差額分を「その他収入」の減算、もしくは事業収入の減算処理を行う。
そのため契約違反により賠償を行う側の税務及びVATインボイス処理については、下表のようになる。

したがって自社側での契約違反により賠償を行う際のVATインボイスの処理、及びCIT上の処理は以下の通りとなる。
・契約違反により金銭での顧客に賠償義務が発生する場合、VATインボイスの発行及び売上VATの計算は必要なく、出金伝票の発行のみが必要である。また当該賠償金はCIT計算時に、その他収入の減算または事業活動の収入の減算を行う。
・契約違反により商品・サービスでの顧客へ賠償義務が発生する場合、通常の物品・サービス販売時と同様にVATインボイス発行、売上VATの計算が必要である。また、CIT計算時に、その他収入の減算または事業活動の収入の減算を行う。

おわりに

今回は契約違反による賠償が発生した場合のVAT(付加価値税)、CIT(法人税)及びVATインボイスの発行に係る規定を説明した。パターン別に適切な処理方法を理解し、規定を遵守する必要がある。

参考文献:
付加価値税法の施行ガイドライン通達219/2013/TT-BTC
法人税の実施ガイドライン通達78/2014/TT-BTC

本レポートに関する
お問い合わせはこちら