外国企業の事業拡大時における事業形態別の会計税務比較
2024/10/01
- Vu Hai Yen
はじめに
ベトナムに所在する外国企業がベトナムの他の地域に事業を拡大する際には、次のいずれかの形式を選択できる。
・新規の外国企業を設立する
・既存の外国企業が子会社、独立支店・従属支店または経営拠点のいずれかを設立する
外国企業にとって事業規模を拡大するためには、どの事業形態を選択するかが重要な課題である。本稿では、事業形態別の会計税務の違いや重要なポイントを説明する。
1.用語の整理
・企業:独自の名前・資産・オフィスを有し、法律に従い事業目的で設立された組織。
(本稿では、企業が支店または経営拠点を設立する場合の企業を「本店」と記載する。)
・子会社:資本の一部または全部を他の企業(親会社)が保有し、親会社によって管理されている組織。
・支店:会計税務上の分類で「独立支店」と「従属支店」の2種類がある。
(1)独立支店:本店とは独立して会計活動を行う組織。地方の計画投資局への支店設立時には、「独立会計計上」を選択して申請する。
(2)従属支店:本店と共同の会計活動を行う組織。地方の計画投資局への支店設立時には、「従属会計計上」を選択して申請する。
・経営拠点:企業が具体的な経営活動を行う場所であり、ベトナム現地法人で登記された事業を行う場所。法的地位がないため、契約当事者になれない。
2.会計の比較
新規企業 | 子会社 | 独立支店 | 従属支店 | 経営拠点 | |
会計計上の形式 | 会計処理は単独(別々)に行う。 | ・会計処理は本店で一括して行うため、支店・経営拠点から本店へ会計データを転送する。 ・支店が法人税優遇措置のある地域に所在する場合、本店で会計処理を行う場合でも、優遇税制を適用できるように売上や費用を別途管理する必要がある。 |
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財務諸表の作成 | 必要 | 不要 | |||
財務諸表の監査 | 必要 | 不要 | |||
チーフアカウンタントの任命 | 必要 | 不要 |
3.税務の比較
新規企業 | 子会社 | 独立支店 | 従属支店 | 経営拠点 | |
インボイスの発行 | 発行できる | 発行できない | |||
事業登録税 | 新規企業または子会社の管轄税務機関に納税・申告する。 | ・所在地が本店と同じ省であれば、本店管轄の税務機関に申告・納税する。 ・所在地が本店と別の省であれば、支店や経営拠点を管轄する税務機関に申告・納税する。 |
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付加価値税(VAT) | 支店所在地管轄の税務機関に納税・申告する。 | ・VAT申告 本店でまとめて申告する。 ・VAT納税 |
・VAT申告 本店でまとめて申告する。 ・VAT納税 |
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法人税(CIT) | ・CIT申告 本店でまとめて申告する。 ・CIT納税 |
・CIT申告 本店でまとめて申告する。 ・CIT納税 |
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個人所得税(PIT) | +本店が従属支店で勤務する従業員に給与を支払う場合:本店の管轄税務機関に申告し、従業員が勤務する省に納税する。 +従属支店が従属支店で勤務する従業員に給与を支払う場合:支店の管轄税務機関に申告・納税する。 |
+本店が経営拠点で勤務する従業員に給与を支払う場合:本店の管轄税務機関に申告し、従業員が勤務する省に納税する。 +経営拠点が経営拠点で勤務する従業員に給与を支払う場合:経営拠点の管轄税務機関に申告・納税する。 |
おわりに
上記のように、事業形態によって会計税務に関する取扱いは異なることがある。また、法令には企業で発生する状況に対応する具体的な手続きや案内が記載されていないことも多く、企業が事業規模を拡大する際に会計税務上の取扱い関する悩みをすべて拭い去ることは難しい。したがって、企業が自らの責任を認識し、適切な会計税務の各種義務を果たすために、税務当局の法令や案内を定期的に確認することを推奨する。
参考文献
・政令126/2020/ND-CP
・通達80/2021/TT-BTC
・企業法59/2020/QH14
・政令174/2016/ND-CP