Reportレポート

関連者間取引を行う企業の税務管理を規定する政令132/2020号の改正草案

2024/10/25

  • Dang Thi Thanh Truc

はじめに

関連者間取引を行う企業の税務管理を規定する政令132/2020/ND-CP(「政令132」)が施行されて以降、数年間で複数の課題が明らかになった。対象企業の実務に沿った内容の改正が求められ、財務省は2024年7月5日に一部を改正・補足する草案を発行した。本稿では、当該草案のうち特に重要と思われる改正ポイントを説明する。

現在、草案は各省庁やビジネスコミュニティに共有され意見を募っている。主な改訂内容は以下の通りである(改訂追記部分を太字で表示

 1. 政令132第5条2項a),b)への追記(信用機関に関連する資本所有の規定)

a) 企業が他の企業の資本金の少なくとも25%を、直接または間接的に所有している場合。また、企業が信用機関の資本金の少なくとも20%を、直接または間接的に所有している場合。
b) 関連する二つの企業が、いずれも第三者によって直接または間接的に資本金の少なくとも25%を所有されている場合。または、企業と信用機関がいずれも第三者によって資本金の少なくとも20%を直接または間接的に保有されている場合。

この追記により、企業が信用機関と資本関係を有している場合における関連者の要件が明確になった。

 2. 政令132の第5条2項d)への追記(信用機関に関連する規定)

d) 企業が他の企業に対して貸付や保証を提供し、その融資額が相手企業の資本金の25%以上、かつ中長期債務総額の50%以上を占める場合(関連者からの資金を担保とする第三者からの借入れや、同様の金融取引を含む)。

上記規定は、以下の場合には適用されない。
  d.1) 保証人または貸手が信用機関法に基づき運営される経済団体であり、本項のa), c), d), e), g), h), k), l), m)の規定に従って、借入企業または保証を受けた企業に対して、直接的または間接的に経営、管理、出資、投資を行っていない場合。
  d.2) 保証人または貸手が信用機関法に基づき運営される経済団体であり、本項のb), e), i)の規定に従って、借入企業または保証を受けた企業の両方が、第三者によって直接的または間接的に経営、管理、出資、投資を受けていない場合。

この追記は、経営、管理、出資、投資といった観点で関係を持たない信用機関から借入や保証を受けた企業を、関連者から除外することを目的としている。この改定により、単純な銀行借入が関連者取引と見なされることで、次項に記載している「EBITDAに対する利子費用比率制限」の規定が適用されるケースの解消に繋がる。

 3. 損金不算入となる利息の繰越に関連する規定への追加条項

政令132号 第16条では次のように規定されている。
a) 支払利息の損金算入限度額がEBITDAの30%までとされ、当該上限値は純支払利息(受取利息が支払利息と相殺された後の純利息) に適用される。
b) 損金算入限度額を超えた支払利息は翌年度以降に繰り越され、純支払利息 がEBITDA の30%未満であれば損金算入できる。繰越期間は損金不算入支払利息が発生した年度から5年間である。

ただし、2024年度以降、企業が関連者関係を持たず、かつ政令132および本改訂政令に基づいて関連者間取引が行われない場合、以前の課税年度で損金不算入となった利息費用を翌5年間に繰り越すことはできない

この追加条項により、政令132第5条2項d)に基づき信用機関からのみ借入を行った企業に対する、2024年以前の課税年度における損金不算入利息費用の繰越に関する規定を明確化された。すなわち2024年度中に関連者間取引を行わない企業は、以前の課税年度の損金不算入利息費用を翌5年間に繰り越すことができなくなった。

したがって、信用機関法の規定に基づいて運営される経済団体が、上記第2項の改正規定に従って企業の関連当事者であるという要件を満たさなくなった場合、当該経済団体からの借入金に係る支払利息は、上記の5年間の繰越ができない。

 4. 政令132第5条2項m)への追記(信用機関に関する規定)

m)信用機関と関連者は、信用機関法および改定、補足または代替文書(該当する場合)の規定に基づく。
当該追記により、信用機関法における法令上の関連者に関する規定が補足された。

 5. 政令132第21条2項の追記(各省庁および省庁レベルの機関並びに各県および中央主導型都市の国民委員会の責任を規定)

第21条: 各省庁および省庁レベルの機関並びに各県および中央主導型都市の国民委員会の責任

2. 中央銀行はその職務および権力の範囲内で以下の責任を負う。
・税務当局の要求に応じ、関連者間取引を行う企業に対する外国からの借入および債務返済に関する情報やデータを提供する。提供する情報には、貸付額、金利、利息の支払期間および元本支払期間、資金の引き出し実績、債務の返済(元本および利息)、およびその他関連情報(該当する場合)が含まれる。
・税務当局の要求に応じ、信用機関の関係者や信用機関の関連会社に関する情報提供にも協力する。

当該追記により、中央銀行が関連者間取引を行う企業の税務管理を目的とした適切な情報提供を実施する責任を有することが明確化された。

 6. 付録Iの改定 — 関連者関係および関連者間取引に関する情報

改定政令と共に発行される付録Iは、政令132で発行された従来の付録Iに代わるものであり、関連者間取引に関する情報の申告を目的とした改訂および追加内容が反映された。具体的には、上述の政令132第5条2項m)追加されたことに伴い、付録I に当該関連タイプm(信用機関との取引に関する項目)が追加されることになった。

おわりに
本改訂草案の承認後、本政令は2024年の課税年度から有効となる。最新状況については次回以降のニュースレターでお伝えする。

参照規定

政令の改定草案: https://chinhphu.vn/du-thao-vbqppl/du-thao-nghi-dinh-sua-doi-bo-sung-diem-d-khoan-2-dieu-5-nghi-dinh-so-132-2020-nd-cp-ngay-5-11-20-6665

 

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