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有限責任会社における定款資本金の減資手続きと留意点

2024/10/28

  • Luong Diem My

はじめに

減資は、会社の経営方針や財務状況に重大な影響を与える重要な決定である。資本金の減額により会社の事業活動への資金投入が減少するため、法律が定める特定の条件下でのみ実施することが許されている。本稿では、有限会社における減資に関する事例や実施条件、さらに手続き違反時の罰則について説明する。

1. 減資の実施条件

2020年企業法に基づき、有限責任会社は以下のケースで定款資本を減額することができる[1]

ケース 1名社員有限責任会社 2名以上社員有限責任会社
所有者・社員に持分の一部を払い戻す
会社が社員の持分を買い戻す 不可
定款資本が全額かつ期限内に払い込まれない場合

2. 減資の要件

2. 1 所有者・社員に持分の一部を払い戻す場合

この場合、次の2つの要件を満たす必要がある。
(i) 企業設立登記日から 2 年以上継続して経営活動を行っていること
(ii) 社員への払戻し後も、すべての債務およびその他の各財産的義務を全額弁済できることが担保されていること

この方法は最も一般的であるが、いくつかの制限がある。すなわち、会社は事業開始から最初の2年間、定款資本を減額できないほか、減資時には会社が関係当事者 (税務当局、サプライヤー、パートナー企業など)に対する債務や財産的義務を支払う能力が確保されていなければならない。

2.2 社員の要請に応じて会社が社員の持分を買い戻す場合

この状況は、2名以上社員有限責任会社にのみ該当する。社員が以下の事項に関する社員総会の決議や決定に反対した場合、会社に対し自分の持ち分の買い戻しを要請する権利を有する。
a) 社員および社員総会の権利と義務に関連する会社定款の内容を修正・補足
b) 会社の組織再編
c) その他、会社定款で定められた事由[2]

社員持分の買い戻しの要請は、上記事項に関する社員総会の決議や決定に反対した結果であり、会社がその持分を買い戻した場合、定款資本を減額する必要がある。会社は以下の2つの要件が満たされた場合、社員の要請に応じて持分を買い戻す義務がある。
(i) 社員が、反対した決議または決定が可決された日から 15 日以内に、会社対して持分の買い戻しを求める書面による要請を提出していること[3]
(ii) 買い戻し後も、会社がすべての負債やその他の財産上の債務を全額支払う能力が担保されていること[4]

持分の買い戻し価格は、会社と社員の合意、市場価格、または会社定款に基づいて決定される。また、会社が上記(ii)の条件を満たさない場合、持分の買い戻しを要請した社員は、他の社員または第三者に自由に譲渡する権利を有し、その場合は定款資本の減額は行われない。

2. 3 定款資本金が全額かつ期限内に払い込まれない場合

2020年企業法によれば、社員や所有者は企業登録証明書(ERC)の発行日から90日以内に資本金の全額を払い込む必要がある[5]。この期限を過ぎても社員や所有者が約束された資本金を全額払い込まなかった場合、または払い込まれた資本金がERCに登録されている金額を下回った場合には、会社は資本金の払込期限の最終日から 30 日以内に差額分を減額する手続きを行わなければならない。上述の2つの場合とは異なり、銀行口座の開設遅延によって資本金の送金が期限に間に合わなかったり、資本金を実際に送金するタイミングの為替相場の影響を受けたりなど、主に会社設立の初期段階で発生することが多い。

この減資を行う場合には、以下の点に留意する必要がある。
第一に、定款資本の減額によって、会社形態が2名以上社員有限責任会社から1名社員有限責任会社に変更される場合、政令第01/2021/ND-CP号第24条および第26条3項の規定に従って会社形態変更登記の手続きも同時に行う必要がある。
第二に、前述した減額登録の手続きと会社形態変更登記の手続きは分離することなく同時に行うことができる。

3. 手続き違反に対する罰則規定とその法的根拠

行為 処罰の形態 法的対処
定款資本減額手続きを行わなかった場合(2.3の場合) –   罰金: 30,000,000~50,000,000 VND
–   是正措置:資本金調整または社員変更の手続きを強制的に実施
政令第 122/2021/ND-CP
号第 46 3a ポイントa
定款資本の減額登録期限に違反した場合(2.1および 2.2の場合)

規定期限を過ぎて手続きを実施した場合:
–   延滞日数に応じて、警告または3,000,000~20,000,000 VNDの罰金
–   是正措置: 手続きを強制的に実施

手続きを実施しない場合:
–   罰金: 20,000,000~30,000,000 VND
–   是正措置:手続きを強制的に実施

政令第122/2021/ND-CP号第44

 

おわりに
上記の内容に基づき、会社は減資を決定する前に、関連する規定の概要を十分に理解しておくことが重要である。これにより、会社は事業状況に応じて資本金を効果的に活用し適切な計画を立てられることに加え、法令を遵守することで、持続的かつ長期的な企業成長に貢献できる。

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[1] 2020年企業法第87条3項と第68条3項
[2] 2020年企業法第51条1項
[3] 2020年企業法第51条2項
[4] 2020年企業法第51条3項
[5] 2020年企業法第47条2項と第75条2項

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