Reportレポート

ソフトウェア製品の製造分野における法人税優遇税制に関する留意点

2025/01/14

はじめに
ベトナム政府はソフトウェア関連事業のイノベーションを促進しており、同分野への投資や技術開発を向上させるために、ソフトウェア製品の製造分野の企業に対して多くの法人税の優遇政策を用意している。これらの政策は、法人税法や政令および通達等に規定及び体系化されている。しかし適用期間中の企業活動によっては優遇税制の適用可否に影響が及ぶケースもある。本レポートでは、企業が法人税優遇税制を確実に適用できるよう、留意すべき点をまとめる。

 1. ソフトウェア製品の製造活動に対する法人税優遇税制
ソフトウェア製品の製造活動に対しては、以下の優遇税制を適用できる[1]
・ 税率:優遇税率 10%が 15 年間にわたり適用できる。この 15 年間は売上が計上された年度から起算される。
・ 免税および減税: 課税所得が発生した年度から 4 年間は免税となり、続いて 9 年間 50%減税が適用できる(4 免 9 減)。設立から 3 年経っても課税所得が発生しない場合、課税所得の有無にかかわらず第 4 事業年度から強制的に4 免 9 減の優遇制度の適用が開始する。

優遇税制を適用するために、企業は以下の点を確認する必要がある。
・ 企業の活動がソフトウェア製品の製造に該当するか。(第2章で解説)
・ 製造するソフトウェアが、情報通信省が公表するソフトウェア製品リストに含まれているか。(第3章で解説)
・ 関連法規に基づくソフトウェア製品の製造プロセスの条件を満たしているか(第4章で解説)。

2. ソフトウェア製品とソフトウェアサービスの違い[2]
法人税優遇税制はソフトウェア製品の製造活動にのみ適用され、ソフトウェアサービスは優遇税制の対象外となる。そのため、ソフトウェア製品の製造とソフトウェアサービスを明確に区別する必要がある。
・ ソフトウェア製品の種類には、システムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア、ユーティリティソフトウェア、ツールソフトウェア、その他のソフトウェアなどが含まれ、これらを製造している場合には「ソフトウェア製造」とみなされる。
・ ソフトウェアサービスは、ソフトウェア製造、インストール、活用、利用、アップグレード、保証、メンテナンス、およびソフトウェアに関連するその他の同様の活動を直接サポートする活動である。そのためソフトウェアサービスには、ソフトウェアおよび情報システムの管理、メンテナンスサービス、コンサルティングサービス等が含まれることになる。

3. ソフトウェア製品リスト
情報通信省は政令 71/2007/ND-CP に規定されているソフトウェア製品に基づき、2013 年 4 月 8 日付の通達 09/2013/TT-BTTTT (2021 年 12 月 3 日付の通達 20/2021/TT-BTTTT により改正)にて詳細なソフトウェア製品リストを公表した。以下は、システムグループ別のソフトウェアのリストであり、製造するソフトウェアがこれらの項目に含まれている必要がある。
・ オペレーティングシステム:サーバーオペレーティングシステム、ワークステーション/デスクトップオペレーティングシステムなど。
・ ネットワークソフトウェア: ネットワーク管理ソフトウェア、ネットワーク接続ソフトウェア、ネットワークアプリケーションソフトウェアなど。
・ データ管理およびクエリソフトウェア:サーバーデータベース管理ソフトウェア、クライアントデータベース管理ソフトウェアなど。

4. ソフトウェア製品の製造プロセス
情報通信省の 2020 年 7 月 3 日付の通達 13/2020/TT-BTTTT に基づき、ソフトウェア製品の製造プロセスには以下のステップが想定される。

①要件定義 ②分析・設計 ③プログラミング・コーディング ④検査・テスト ⑤完了・梱包 ⑥インストール・ユーザーへの使い方説明・メンテナンス ⑦発行・販売

ソフトウェア製品の製造活動は、企業がその製品に対して「要件定義」または「分析・設計」の 2 つのうち少なくとも1つを実施し、かつ各段階における作業文書や関連証憑を作成保存する必要があり、これをもって製造プロセスの条件を満たすことになる[3]。なお作業文書には、ソフトウェア製品リストにおけるどのソフトウェアに該当するかを明記し、さらに説得力を持たせるために、成果物の写真等の画像を多めに使用することを推奨する。

5. 優遇税制の適用時のその他注意事項
 5.1 投資プロジェクトの延長
2024年4月2日付のダナン市税務局のオフィシャルレター3259/CTDAN-TTHTに基づき、投資登録証明書(IRC)上のプロジェクトの有効期限が切れ、延長を行う場合、延長期間に対する優遇税制は適用できない。また、会計年度が初回登録のIRC上の最後の年と異なっている企業の場合(例:初回IRCの有効期限は2025年5月であるが、企業の会計年度は2024年7月から2025年6月までである場合)その年度の優遇税制が適用されなくなる可能性があると考えられる。上記のいずれかに該当することになった場合、オフィシャルレターを送付し、税務当局の見解を取得することを推奨する。

5.2  情報通信省への報告
ソフトウェア開発の事業を行う企業は遅くとも翌年3月15日までに、情報通信省に年次のソフトウェア開発活動状況報告書を提出する必要がある。 提出方法は以下の3 つの中から選択できる。
・ 報告書のソフトコピーを電子メール( vanthucntt@mic.gov.vn )に送信
・ 報告書のハードコピーを情報通信省の情報通信技術産業局に郵送
・ ウェブサイトでのオンライン提出

最近の税務調査では、企業がソフトウェア開発活動を行っているかどうかを判断するための根拠として税務当局によりソフトウェア開発活動状況報告書の提出状況を確認される傾向がある。報告書を提出していない場合、法人税優遇措置の適用可否について指摘される可能性がある。

おわりに
ソフトウェア製品の製造は作業ステップが多く、高度で専門的な活動であるため、企業が優遇税制を受けられるかどうかは、それぞれの具体的な書類や状況により異なる。当局から指摘されるリスクを回避するためには、法的規制を適切に理解し、行政手続きや関連書類の作成を適切に実施する必要がある。優遇税制を最大限に活用することで、法人税というコストを最適化できるだけではなく、生産および事業活動における透明性と法令順守も達成することができる。

参考文献

2009 年 1 月 1 日発効の法人税法第14/2008/QH12(2014 年 1 月 1 日発効の法人税法 第 32/2013/QH13 により改正)
2007年5月3日付の政令第71/2007/NĐ-CP
2013 年 4 月 8 日付の情報通信省の通達 09/2013/TT-BTTTT (2021 年 12 月 3 日付の通達 20/2021/TT-BTTTT により改正)
2020 年 7 月 3 日付の情報通信省の通達 13/2020/TT-BTTTT
2024年4月2日付のダナン市税務局のオフィシャルレター3259/CTDAN-TTHT

[1] 2009 年 1 月 1 日発効の法人税法 第14/2008/QH12(2014 年 1 月 1 日発効の法人税法 第 32/2013/QH13号 により改正)
[2] 2007年5月3日付の政令第71/2007/NĐ-CP
[3]各段階の具体的な説明は、2020 年 7 月 3 日付の通達 13/2020/TT-BTTTT の第 3 条をご参照ください。

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