ベトナムにおいて外国資本の外国語教育センターを設立する際の留意点
2025/03/01
- Huynh Minh Trang
はじめに
グローバル化が進展する中、ベトナムにおける外国語の特に短期学習や研修への需要はますます高まっており、その結果として日本語を含む外国語教育センターの設立を目指す外国企業が増加している。本稿では、ベトナムにおいて外国語教育センターを設立する際の留意点を解説する。
1. 外国語教育センター設立の法律根拠
WTOコミットメントによると、外国投資家はベトナムにおいて外国語教育サービスの事業を実施し、外資100%の外国語教育センターを設立することが認められている。
また、ベトナムにおける教育分野での外国からの投資、協力に関する政令86/2018/ND-CP号第2条第2項によれば、外国語教育センターは短期訓練・養成施設に分類される。そのため、設立の際には、短期訓練・養成施設の条件を満たす必要がある。
2. 外国語教育センター設立の流れ
政令86/2018/ND-CP号第45条第1項によれば、教育活動を行うためには、通常外国企業が取得する投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)に加え、「教育活動許可決定書」を取得することが求められる。設立手続きは以下の3つのケースに分けられる。
ケース1:新しい会社を設立する場合
これは、IRCの申請時には教育センターの場所が決まっている場合を意味し、本社と外国語教育センターの場所が同じ、または異なる場合がある。ただし、後者の場合は、以下の3ステップに加え、支店または経営拠点の設立手続きが必要となる。
ステップ①では、通常管轄機関は投資方針、投資資本(計画投資省)、周辺交通に対するセンターの位置(交通運輸省)、計画およびプロジェクトの使用目的(人民委員会)、教育プログラム、教職員基準(教育訓練省)などの主要内容を審査する。この段階では、投資家が投資資金、施設、設備、教員の数および資格基準などの条件を満たしていることを説明する必要がある。詳細は、本稿の第3項で述べる。
ケース2:教育活動を実施するための事業内容を追加する場合
会社設立当初に教育活動に適した場所を確保できなかった場合、センターの場所が決定した際に、登録済みの企業登録と投資登録における事業内容の追加を行う必要がある。
本社をセンターの場所に変更する場合、上記に加え住所変更を行う必要がある。
センターのみ新たな場所で設立する場合、支店または経営拠点の設立手続きが必要となる。
ケース3:既存の外国語教育センターのほかに、新たなセンターを設立する場合
新しいセンターを設立する場合、その設立は独立したプロジェクトとして扱われる。この場合、まず本社が増資を実施したうえで、支店または経営拠点を設立する。その後、新たなセンターに対して教育活動許可決定書と投資登録証明書の申請が必要である。
3. 教育活動許可決定書申請の条件
教育活動を許可されるためには、以下の条件を満たす必要がある。
No | 条件 | 法令規定 | 備考 |
1 | 資本金 | ・最低資本:学生1人あたり最低2,000万ドン(土地使用費を除く) ・新施設を建設せず、既存施設を使用する場合、最低投資額は1,400万ドン ・総資本の最低額は、規模が最も大きくなると予想される時点を基に算出する例:規模が最も大きくなると予想される時点での学習者が40名の場合、最低資本金は40名x2,000万ドン=80,000万ドン |
・実務上、許可を取得するには、最低投資額を上回る資本金が必要である。 ・最大規模における学習者数は、すべての授業が実施され、かつ学習者が全員センターに集結する前提で算出する。 |
2 | 施設 | ・学生1人あたり最低2.5m²の面積が必要 ・センターの場所で最低5年間の賃貸契約があること ・照明、机椅子、設備等、学習室が教育プログラムに適応していること ・取締役会、幹部、教員用の事務所、図書室、その他の機能をもった部屋があること ・防火と消火、労働安全の面で法令に適合していること |
・許可取得には通常1年程度かかるため、賃貸契約は6年以上が望ましい。 ・高層ビルの場合、4階以下に位置する必要あり(地域により異なる)。 ・条件の該当性につき教育訓練省および投資企画省の職員による臨検が行われる場合がある。 |
3 | 教育プログラム | ・国防、国家安全、公衆利益に害を与えない内容 ・現地教育機関による品質基準の認証、評価をうけていること ・5年以上現地で実施されていた実績が必要 |
・プログラム内容の詳細について説明が求められる。 ・教育プログラムの認定証や許可証、プログラムを使用する権利を証明する書類など、追加の書類提出が必要となる。 ・厳しい審査を見越して、事前確認が推奨される。 |
4 |
人員 |
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4.1 | センター長および副センター長 | ・学歴:外国語大学卒業または大学卒業で外国語資格があること ・経験:教育・研修分野での活動経験があること(例:教育施設でのマネージング・募集などの経験) |
・センター長は社長が兼任することも可能。 |
4.2 | 教員 | ・人員数:教員と学生の比率は最大1:25 ・学歴: 【ベトナム人教員の場合】 外国語教育の専攻として短大卒業以上、または外国語の専攻として短大卒業以上および教育証明書を有すること。 【外国人教員の場合】 ①外国語教育の専攻として短大卒業以上 または ②外国語の専攻として短大卒業以上および適当な言語の教育証明書を有すること または ③短大卒業以上、適当な言語の教育証明書および外国語資格を有すること 【外国人教員が母語話者である場合】 短大卒業以上および適当な言語の教育証明書を有すること |
・外国人教員の労働許可証が必要(教育活動許可申請前に取得する必要あり)。 |
おわりに
ベトナムでの教育の質と環境への適合性を確保するため、法律は外国企業による外国語教育センターの設立に対して厳しい条件を定めている。実務上の法令運用が地域や管轄機関によって異なっていたり、追加書類が求められたりなど、申請手続きには時間がかかることがある。そのため、投資家はプロジェクトの実現性と進捗を確保するため、投資条件、設立に必要な書類、実施計画をしっかりと準備することが求められる。
参考文献
・2019年の教育法
・教育分野における外国との協力及び投資に関する政令第86/2018/ND-CP号;
・政令第86/2018/ND-CP号の一部改正・補足を行った政令第124/2024/ND-CP号;
・外国資本による教育機関の設置、運営及び学科の開設条件に関する通知第21/2018/TT-BGDDT号