税金滞納によるベトナム出国停止措置に関する最新政令
2025/03/17
- I-GLOCAL CO., LTD. ハノイ事務所
- Partner
- 逆井将也
はじめに
近年ベトナム税務局は、出入国管理局と連携し、税金滞納者に対し一時的な出国停止措置を講じています。日本人でも実際にベトナムの空港のイミグレーションで出国を止められてしまったケースも複数起きてしまっている状況です。弊社も過去に関連レポート(https://www.i-glocal.com/report/241011/)を掲載しておりますが、2025年2月28日に政令49/2025/NĐ-CPが公布、当日より施行され、当措置に関する規定がさらに具体化されました。本稿では最新政令に基づく出国停止措置のポイントについて解説します。
1.出国停止措置の対象者
当政令では、税金滞納による出国停止の対象が以下の通りより明確になりました。
No. | 対象者 | 条件 |
(i) | 外国人・国外移住予定のベトナム人・国外居住のベトナム人 | 規定無し |
(ii) | 企業の法的代表者 | ・税務管理法第124条に基づく「強制執行対象の企業」に該当 ・納税滞納額が5億ドン以上 ・納税期限を120日以上超過 |
(iii) | 個人事業主・家族経営 | ・納税滞納額が5000万ドン以上 ・納税期限を120日以上超過 |
(iv) | 事業活動が住所登録で確認できない納税者 | 規定無し |
「滞納」には、未払いの税金だけでなく、延滞金や行政罰金も含まれる点に注意が必要です。
日本人が出国停止措置となったケースは個人所得税がほとんどで、当政令上では対象者(i)の「外国人」に分類されます。大きなポイントと言えるのは、このカテゴリーには「滞納額○○以上」のような金額条件等が無いことです。そのため、仮に僅かな金額でも滞納がある限り、出国停止措置となってしまう恐れがあります。
- 出国停止の通知と解除手続き
(1) 出国停止の通知方法
・納税者への電子通知(例:eTax Mobileアプリ、電子税務取引アカウント[thuedientu.gdt.gov.vn]、登録済みメールアドレス
・電子通知が送信できない場合、税務局の公式ウェブサイトに掲載
通知を見逃すと、出国時に突然トラブルに直面する可能性があるため、定期的に確認することを推奨します。また、現行実務上、当通知の前に納税者に事前連絡がくることが一般的です。このような事前連絡についても見逃さないことが大切です。
(2) 出国停止の適用プロセス
・対象者 (i)
出国準備を進めている場合、税務局は直ちに出国停止措置を実施。納税者および出入国管理局に通知される。
・対象者(ii), (iii) , (iv)
1. 税務局が滞納通知を納税者へ送付
2. 30日以内に滞納分を支払わない場合、税務局が出入国管理機関へ出国停止を要請
上述の通り、外国人の個人所得税の場合については、滞納通知と同時に出国停止措置ができるようになっています。一方、「出国準備を進めている場合」の定義が不明確なため、実際にどのように判断されていくのか今後の実務事例を注視していく必要があります。
(3) 出国停止の解除手続き
滞納税額を支払うと、税務局が24時間以内に出入国管理局へ出国停止取消通知を送付し、その後出国可能となります。
おわりに
本当に困った話で過去に正しく納税していたにも関わらず、税務局のミスやシステムエラーで滞納と判断されてしまったケースが一定数あります。これまでは税務局に対し納税証跡を持参のうえ訂正を依頼すれば、出国停止措置にまで発展することは滅多にありませんでしたが、当政令により外国人については滞納通知と同時に即出国停止措置となる可能性が高まったと言えます。
突然のトラブルを防ぐためにも、定期的にeTax Mobileアプリや電子税務取引アカウント[thuedientu.gdt.gov.vn]でご自身の税金滞納が無いかご確認いただくことを推奨します。また、税金滞納があることを確認した際や、税務局から滞納通知・連絡を受け取った際には、すぐに自社担当者や弊社のような会計事務所等とご相談いただければと思います。