Reportレポート

企業法における株式会社の監査役会についての規定

2022/05/20

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 監査役会は、株式会社において重要な役割を果たす。監査役会には、取締役会、社長の経営管理における透明性を確保し、株主の利益を守る機能を果たすことが期待されている。
 本稿では、企業法(2020年制定)における株式会社の監査役会に関する規定の重要点についてまとめる。

1.監査役会設置の重要性
 有限会社と株式会社の構成における重要な相違点の一つに、監査役会の設置義務の有無がある。監査役会は、取締役会および社長の経営・業務執行の適法性、合理性、誠実性を検査・監督する役割を担う独立した機関である。有限会社において監査役や監査役会の設置は任意であるが、株式会社では原則として監査役会の設置が義務づけられている。

 ただし以下の場合には、監査役会設置は任意とされる。
 (i) 株主が11人未満であり、各株主が会社の株式総数の50パーセント未満を保有する組織である場合
 (ii) 取締役の少なくとも20パーセントが独立取締役であり、また、取締役会に直属する会計監査委員会がある場合

2.監査役会の構成
 監査役会は3~5名の監査役を有し、また監査役会の過半数はベトナムに常駐している監査役でなければならない。監査役の任命、免職、罷免は以下のルールに則り株主総会によって決定される。

– 監査役の任命:期間は5年を超えない。ただし再任回数の制限はない。
– 監査役の免任事由:
 (i) 企業法に定められた資格および条件を満たさなくなった。
 (ii) 辞任届を提出して承認された。
 (iii)会社の定款に定めるその他の場合。
– 監査役の罷免事由:
 (i) 割り当てられた任務・業務を完成しない。
 (ii) 不可抗力の場合を除き、6か月間継続して自己の権限を行使せず義務を履行しない。
 (iii) 企業法および会社の定款の規定に従った監査役の義務の複数回の違反、重大な違反をした。
 (iv) 株主総会の決定に従ったその他の場合。

3.監査役会の会長および監査役の資格および条件
a. 監査役の資格および条件
 (i) 企業法第17条第2項に定められた、企業を設立し管理する権限を有さない者でない。
 (ii) 経済、財政、会計、監査、法律、経営管理に関する専門分野、または企業の経営活動と符合する専門分野に属する資格や学歴を有する。
 (iii) 取締役、社長およびその他の管理者の親族関係者でない。
 (iv) 会社の管理者でない。また、会社の定款が異なる規定を有する場合を除き、必ずしも会社の株主又は労働者でなくてもよい。
 (v) 関連法令および会社の定款の規定に従ったその他の資格および条件。

b. 監査役会の長の資格および条件
 監査役会の会長は、監査役の中から多数決により任命される。2014年企業法(旧法)と比較すると、監査役会の長の資格として認められる専門分野の選択肢が増えている。具体的には、
– 現行の企業法では、監査役会の長は、会社の定款がより高い資格を定める場合を除き、経済、財政、会計、監査、法律、企業管理の専門又は企業の経営活動と関連する専門の一つに属する大学以上を卒業していなければならない。
– 旧法では、監査役会の長は、会社の定款がより高い資格を定める場合を除き、専門の会計士又は会計監査官であり、かつ専任でなければならなかった。

4.監査役会の権限および義務
 監査役会の権限および義務は企業法の第170条、第171条に定められている。重要点の概要は以下のとおりとなっている。
– 経営活動の管理、運営における合理性、合法性、誠実性及び慎重さを検査する。
– 取締役会又は株主総会の権限と関連を有する関係者との契約、取引を精査し、取締役会又は株主総会の承認が必要な契約、取引について勧告をする。
– 株主または株主グループの請求に基づく臨時の検査を行う。
– 取締役会又は株主総会に対し、企業の経営活動に関する経営・監督・管理の組織機構の修正・補充・改善の方法などを提案する。
– 会社の管理者が、企業法に規定された責任を果たさず違反を行った場合に、取締役会に報告し、違反者に対し違反行為の終了と悪影響の問題解決を請求する。
– 本社、支店、その他の場所に保管されている会社の資料にアクセスする。
– 取締役会、社長その他の管理者から、会社の経営、管理および事業活動に関する情報および資料提供を、十分に、正確に、遅滞なく受ける。

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