Reportレポート

ベトナムで小売分野における外資企業向けの重要な注意事項

2024/04/26

  • 米国公認会計士
  • 逆井将也

 一般的な商取引活動や小売活動は、ベトナムにおける条件付きの事業投資分野である。したがって、小売事業を展開する外国企業は、他の事業と同様に企業の事業ライセンスを計画投資局に登録することに加え、小売事業のビジネスライセンスの申請など、追加の法的事業投資条件も満たさなければならない。しかし、ベトナムで小売事業を行う際の事業条件や義務を明確に理解している企業は多くない。本レポートでは、ベトナムでスムーズかつ合法的に事業活動を行えるよう、小売流通活動(小売店を設立しない場合)を行う外国企業のライセンス取得と事業活動に関する重要な注意事項を解説する。
1. 外国企業と小売事業の概念
 まず、「外国企業」とは外国投資家である社員または株主がいる経済組織企業を指す1。また、「外国投資家」とは、外国の国籍を有する個人や、外国の法令に基づいて設立された組織でベトナムにおいて経営投資活動を実施する者を指す。そのため、たとえ外国投資家が企業資本の1%のみである場合でも、ベトナムでは外国企業とみなされ、関連する制約を受けるとされている。
次に、「小売」・「小売流通」とは、一般に「商品の売買活動および売買に直接関連する活動」の形態の一つであり、具体的には、消費目的で個人・家庭・その他の組織に商品を販売する活動を指す2。
2. 小売事業のビジネスライセンスに関する規制
2.1 ビジネスライセンスの発給条件
 外国企業は小売流通活動(小売店を設立しない場合)を行う際にビジネスライセンスの申請が必要となる3。ライセンスの発給条件は、政令 09/2018/ND-CP 第 9 条に具体的に規定されており、外国企業は基本的に以下の 2 つの条件を満たさなければならない。
(1) 小売事業を行うための財務計画を立て、その資金源と財務能力を説明する。企業の業績状況、出資者や銀行からの運転資金の資金源等、将来的な財政支援計画に基づいた財務計画を詳細に説明することが求められる。
(2) 外国企業がベトナムで設立されて 1 年以上経過している場合は延滞税債務が免除される。この条件を満たすために、外国企業はビジネスライセンスの申請手続
きを進める前に、税務当局と納税義務を確認し完了させておく必要がある。しかし設立直後または設立後 1 年未満の外国企業はこの要件を満たす必要はない。
2.2 小売事業のビジネスライセンスの期限
 WTO 加盟時のベトナムの公約によれば、小売流通活動は外国出資者にも市場開放されている分野である。米、砂糖、録音物、書籍、新聞、雑誌等の一部の特定商品の小売事業は、ビジネスライセンスの期限が5年とされているが、それ以外の商品の場合は小売事業のビジネスライセンスは無期限である4。
2.3 ビジネスライセンスの修正
外国企業はビジネスライセンスで以下の内容が変更された場合、ビジネスライセンスの調整手続きを行わなければならない5。
a) 企業名、企業コード、本社住所および法定代表者
b) 出資者、出資社員、設立株主
c) 小売流通の商品
d) その他の内容
特に、上記 a と b の場合、外国企業は次の手続きを実施しなければならない。
(i) 変更日から 10 日以内に、企業登録証明書の調整手続きを実行する。
(ii) 変更内容が反映された企業登録証明書の発行日から 10 営業日以内に、ビジネスライセンスの修正申請を提出する。
上記の手続きを行わない場合、またはビジネスライセンスの調整手続きが上記の期限より遅れた場合、行政違反として VND 20,000,000~30,000,000 の罰金が科される6。
3. 事業活動時のその他の注意事項
3.1 定期報告書
 ビジネスライセンスを取得している外国企業は、取得年直後の 1 月 31 日までに、管轄の商工局に対し商品の購入・販売活動およびこれに関連する活動の状況について定期的に報告する義務がある7。24 カ月連続して定期報告を行わなかった場合、ビジネスライセンスが取り消されるリスクがある8。このリスクを回避するため、外国企業は定期報告書の提出義務を期限どおりに履行する必要がある。
3.2 小売事業の臨時休業
 政令第 09/2018/ND-CP 号によれば、外国企業は 12 カ月以内の期間、小売事業を一時的に停止することが許可されている。ただし、一時停止にあたっては以下の手続きが必要となる。
(i) 計画投資局に営業・業務の一時停止の手続きを実施する。
(ii) 計画投資局より発行された営業・業務の一時停止証明書の発行日から 10 営業日以内に、データベースにアップロードするためコピー版をビジネライセンス発行官庁に送付する9。
したがって、外国企業が小売事業の一時停止をしたい場合は、停止が認められる最長期間や関連手続きに注意する必要がある。
結論
 上記は、現行法令に基づいた小売流通業を行う外国企業のライセンスと事業運営に関するいくつかの注意事項である。現在小売事業を実施する企業や今後当該分野での事業進出を検討されている企業は、法的規制を遵守し、関連する法的リスクを排除できるよう、本レポートをお役立ていただきたい。

1. 投資法第 3 条 22 項
2.政令第 09/2018/ND-CP 号第 3 条 7 項
3.政令第 09/2018/ND-CP 号第 5 条 1 項
4.政令第 09/2018/ND-CP 号第 11 条 2 項
5.政令第 09/2018/ND-CP 号第 11 条及び 14 条
6.政令第 09/2018/ND-CP 号第 70 条 2 項 a ポイント
7.政令第 09/2018/ND-CP 号第 40 条
8.政令第 09/2018/ND-CP 号第 43 条 1 項 đ ポイント
9.政令第 09/2018/ND-CP 号第 44 条

以上

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