輸入仕入・輸出売上の認識時点及び換算レートに関する会計・税務上の取り扱い
2022/04/22
- Vo Thi Nguyen Linh
はじめに
日系ベトナム企業は、日本親会社等外国企業との輸出入取引が多いが、輸入仕入または輸出売上の認識時点及び為替換算レートの取り扱いについて、会計基準と税務規定でいくつかの違いがある。本稿では、会計・税務の相違点を解説する。
1.輸入仕入または輸出売上の認識時点
1.1 会計上ベトナム会計基準(VAS)上、以下5つの条件を全て満たした場合にのみ、仕入あるいは売上を計上する。
(1)商品に関連する経済価値及びリスクが売り手から買い手に移転すること
(2)商品の支配が販売者から購入者に移転されたこと
(3)収益の額を、信頼性をもって測定できること
(4)その取引に関する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと
(5)その取引について発生した原価が信頼性をもって測定できること輸出入取引の場合、商品に関連する経済価値及びリスクが売り手(輸出者)から買い手(輸入者)に移転する時点がいつかを決定するために、インコタームズ及び契約書の条項に注意を払う必要がある。この点を理解するため、一般的なインコタームズの条件であるCIFとFOBに関して説明する。
■ CIF(Cost, Insurance&Freight)
CIFとは、売り手が積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用、仕向け地までの海上運賃及び保険料を負担し、それ以降のリスクは買い手が負担する条件である。
■ FOB(Free on Board)
FOBとは、売主が積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用を負担し、それ以降の費用及びリスクは買主が負担する条件である。CIFとFOB両方の場合において、商品に関連するリスク(危険負担は積み地の港で買主に移転する(CIFでは海上運賃及び保険料が売主負担となる点がFOBと異なる)。会計上は、船荷証券(Bill of Lading)の日付に基づいて買主が仕入計上し、売主が売上計上する。ただし、当事者間の販売契約で特別な条件を設定している場合は、この限りではないので、注意してほしい。
1.2 税務上
輸入輸入仕入の認識時点は会計と同じである。
輸出売上の認識時点は税関申告書類の税関手続きの完了が確認された日(通関日)である。つまり、会計・税務間で輸出売上の認識時点は違いがある。
例:2021年12月には、税関申告書類における通関日は12月31日である輸出取引が発生したが、Bill of Ladingの日付は1月2日となる場合、会計と法人税の売上計上日は以下の通りである。
・会計:2022年1月2日に計上する
・法人税:2021年12月31日に計上する。
会計・税務で売上認識時点に差異があるため、 2021年度の法人税の確定申告書を作成する際、売上及び対応する売上原価を増額調整する(会計上は2022年に売上計上だが、税務上は2021年に売上計上)。
2.換算レートの取り扱い
実務上、税関申告時に適用した為替レートに基 づいて外貨建取引をベトナムドン(VND)に換算し、輸入仕入及び輸出売上を計上しているが、本来、税関申告の為替レートは関税等の計算用だけに適用される。Circular 200/2014/TT-BTCによれば、会計・法人税上、全ての外貨建取引において、実際の為替レートを適用することが規定されている。輸出入取引種類ごとに適用される実際の為替レートの取り扱いは以下の通りである。
2.1 輸入仕入の計上に関する適用換算レート
会社が代金の支払いに使用する銀行の取引日に公表されるSellレート(TTS)で計算される。また、以下の通り、4つのケースに分類され、使用される為替レートが異なる。
(1)事前に全額支払い、後で商品を輸入する場合:支払い日のTTS
(2)事前に商品を輸入し、後で支払う場合:商品の輸入日のTTS
(3)輸入日と支払い日が同じである場合:輸入・支払い日のTTS
(4)事前に輸入仕入代金の一部を前払いする場合:
・前払い部分については支払い日のTTS
・残る未払い分は、商品の輸入日のTTS
2.2 輸出売上の計上に関する適用換算レート
輸出売上の認識時点は会計税務間で差異があるが、為替 レートはどちらもCircular 200/2014/TT-BTCが適用される。
会社が代金の受取に指定する銀行の取引日に公表されるBuyレート(TTB)で 計算される。また、以下の通り、4つのケースに分類され、使用される為替レートが異なる。
(1)事前に代金を全額受領し、後で商品を輸出する場合:前受入金日のTTB
(2)事前に商品を輸出し、後で代金受領する場合:商品輸出日のTTB
(3)輸出日と入金日が同じである場合:輸出・入金日のTTB
(4)事前に輸出売上代金の一部を受領する場合:
・前受部分については入金日のTTB
・残る未収分は、輸出日のTTB
おわりに
輸入仕入・輸出売上の認識時点及び為替レートに関する会計と税務間の相違点をまとめた。ベトナムでは、外貨換算に関する会計と税務の規定には一定の差異がある。この差異を適切に認識することは、企業が財務諸表を作成する際に基準と会計制度を順守すると同時に、納税義務を適切かつ完全に守ることに役立つ。