Reportレポート

有限会社の管理者および監査役を変更する際の注意事項

2023/04/28

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

1.管理者および監査役の概念
1.1.管理者

 2020年企業法第4条第24項では、企業の管理者が定義されている。具体的には、「企業の管理者」とは、私人企業・会社の管理者を意味し、私人企業主、合名社員、社員総会の会長、社員総会の構成員、会社の会長、取締役会の会長、取締役、社長・総社長、および会社定款の規定に従ったその他の管理者の地位にある個人を指す。
 企業の管理者は、企業法の規定に従い以下の役職を務める。

・企業の法定代表者は、企業の取引から発生する権利と義務を行使することができる企業を代表する個人である。通常、会社の会長、社員総会の会長、社長・総社長などの役職を務める。上記の役職に加え、会社は法定代表者として他の役職も選択することができ、会社定款で記載する必要がある。
・組織である会社所有者、社員の委任代表者は、書面による委任を受け、当該所有者、社員の名前で権利と義務を行使する個人を指す。さらに、法定代表者は委任代表者を兼務することもできる。

 企業の管理者を纏めると次の通りである。

一人有限責任会社(いずれかのモデル) 二人以上有限責任会社
会社の会長、社長・総社長 社員総会の会長、社員総会の構成員、社長・総社長
社員総会の会長、社員総会の構成員、社長・総社長

1.2.監査役
 企業法では、監査役の概念を具体的に規定していないが、監査役は会社の事業活動、社員総会、会社の会長、社長、他の管理者の権利・義務の履行を監督・監査する義務を負う者であると理解できる。2014年企業法と比較し、現法では有限会社の管理組織機構において監査役を配置する必要がなくなった。ただし、会社の要求に応じて監査役の任命や監査役会の設置が可能である。

2.管理者および監査役の変更を決定する権限
2.1.一人有限責任会社
 一人有限責任会社は、一つの組織または一人の個人が所有する会社(以下「会社所有者」)である。
 2020年企業法第76条第1項cによると、会社所有者の権利は次の通りである。

c)会社の管理組織機構を決定し、会社の管理者・監査役を任命、免任、罷免する。

 2020年企業法第81条第1項は、以下のように規定している。

“1. 会社の会長は、会社所有者が任命する会社の会長は、会社所有者の名義で会社所有者の各権利を行使し、義務を履行し、…したがって、会社の所有者は、上記の管理者および監査役を任命、免任または解任する権利を有する。”

2.2. 二人以上有限責任会社
 二人以上有限責任会社は、2 人から50人未満の組織や個人の社員からなる。社員総会は、会社の最高決定機関であり、委任代表者を含む会社の社員全員からなる。社員総会の権限は、企業法第55条第2項に次のように規定されている。

“dd)社員総会の会長の選任、免任、罷免。社長又は総社長、会計部門の長、監査役及び会社の定款に定めるその他の管理者の任命、免任、罷免、契約の締結及び終了を決定する。”

 したがって、社員総会は、会社の管理者および監査役の選任、解任、および解任を決定する権限を有する。

3.必要な手続き
 2つの有限会社の経営管理モデルに違いはあるものの、管理者および監査役を変更する際に必要な手続きは同じである。詳細は下記の通りである。

3.1.社内手続き
 管理者および監査役を変更する場合、会社は有限会社の形態によって次のように社内手続きを行う必要がある。

 
一人有限責任会社 二人以上有限責任会社 留意事項
会社の所有者が変更の決定書を発行する。 社員総会により変更の決定書を発行する。 当該決定の内容は法律で定められていないため、会社が作成した社内文書であると理解できる。会社は任命時期(ある場合)や役職などの内容を記載したほうが良い。

3.2.管轄官庁との手続き
a.事業登録機関(計画投資局の事業登録部)
 監査役については、現在の企業法により、事業登録機関への変更通知が不要になった。したがって、変更があった際には社内手続きのみを実施し、解任または任命の決定書を発行する必要がある。管理者については、会社が事業登録機関に事業登録内容変更に関する手続きを行う必要がある。また、企業法で定められた管理者・監査役の任期や就任回数にも注意が必要である。

一人有限責任会社 二人以上有限責任会社
会社の会長 社員総会の会長 社員総会の構成員 社長・総社長 監査役(いる場合) 社員総会の会長 社員総会の構成員 社長・総社長 監査役(いる場合)
任期 規定なし 5年以内 規定なし 5年以内 規定なし 5年以内
就任回数 無制限 規定なし 無制限 無制限

 就任回数の明確な規定がない役職については、最初の任期が満了する際に会社所有者・社員総会が引き続き任命する希望がある場合は、管轄官庁との手続きは不要であり、社内手続きのみを行う。

b. 労働機関(労働傷病兵社会局または工業団地管理委員会)
 管理者・監査役を務める外国人労働者の場合、事業登録に係る手続きのほか、対象となる場合、労働許可証の申請といった労務に係る手続きを実施する必要がある。詳細は下記の通りである。

(i)新任の場合
・労働許可証なし:政令152/NDCP第9条、第11条の規定に従い、労働許可証を申請する。
・別の役職を務め、任命される前に労働許可証を持っている場合:政令152/NDCPの第9条、第11条第9項に規定されている特別なケースとして、労働許可証を申請する。
 この場合には、適切な実務経験を有する等の労働許可証の条件に注意を払う必要がある。また、外国人労働者の新しい役職に応じて、任命書、労働契約書などの書類を作成し直す必要がある。

(ii) 前任者を解任し、後任者を任命する場合:前任者の労働許可証があれば返却し、(i)の場合と同様に、後任者の労働許可証を申請する。

おわりに
 以上、有限会社において管理者および監査役を変更する際の注意事項をまとめた。会社は規定を遵守した活動を実施するために、当レポートをご活用いただきたい。

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