Reportレポート

テレワークを導入する際の留意点について

2022/03/03

  • Phan Manh Hung

はじめに
 複雑化してきた新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オフィスの一時閉鎖や、労働者が封鎖指定区域に居住しているとの理由で、多くの雇用者がテレワークを導入するようになった。テレワークは急速に普及しており、コロナ禍での一時的な緊急対応から、今後の働き方のスタンダードになってくると想定される。
 こうした背景の下、本稿ではテレワークを導入する際に留意すべき点を解説したい。

1.「テレワーク」とは?
 現行法ではまだ定義されていないが、労働者が自宅などオフィス以外の場所で労働契約に記載された業務を行う勤務形態であると理解できる。

2.テレワーク中の労働者を雇用する際の留意点
 テレワークの導入には、雇用者側からみれば事業継続能力の向上や労働リソースの拡大をもたらすとともに、労働者の通勤時間や食事代等の経費を削減できるメリットがある。しかし、テレワーク勤務の労働者を雇用する際に以下の通り留意点もある。

2.1 テレワーク勤務の労働者に対する賃金・手当
(1)賃金
2019年労働法第96条により、労働者へ以下のいずれかの形式で支給する。

支給形式 支給方針
時間給 労働契約上の勤務時間に応じて支給する
出来高払い 労働契約で定めた品質の製品や成果物の完成数量に応じて支給する
請負 割り当てられた作業の量・質の完了に応じて支給する

 原則として、テレワークでは勤務場所しか変更されず、支給形式を含めるその他の内容は既存の労働契約に従わなければならない。そのため、労働者が支給形式に即して支給方針の条件を満たした場合、労働契約上の賃金全額が支払われなければならない。
 ただし、テレワークで労働者の作業効率が低下することも可能性として考えられる。雇用者は定期的に作業効率を評価し、もし特別な理由なく著しい作業効率の低下が見られる場合は、給与水準の見直しを労働者と合意することを検討すべきであろう。

(2)手当
 テレワーク導入時には労働者に対するさまざまな費用、特に電話・インターネット・文書郵送などにかかる必要経費が発生する可能性がある。
 これらの必要経費について、労働契約で定めた賃金(給与)に必要経費の支給も含まれることとするか、あるいは手当の内容や支給条件の調整を検討し、必要経費に対する各当事者の責任や負担関係を明確にすることは大事である。
 賃金・手当は労働契約の内容の1つであるので、この調整は事前に合意され、労働者の同意を書面(労働契約の付録など)で得る必要がある。

2.2 勤務時間の管理
 これはテレワークの導入にあたって最も難しい問題の1つである。時間給の形式で支給する場合は、労働者に適切な賃金を支払うことができるよう、雇用者は勤怠・残業時間の管理システムを導入することをお勧めする。

2.3 労働災害
 労働災害とは、労働者が業務・任務を遂行する業務中に発生する災害で、労働者の人体の部位や機能に損害を与え、また死亡させる災害である。したがって、ある事件が労働災害と見なされるかどうかの判断は、労働災害発生場所だけでなく、上記の要因にも基づく。そのため、労働者のテレワーク中に災害が起こる、またはその災害が業務・任務の遂行に関連すれば、労働災害と見なされる。
 また、労働災害が発生した時、雇用者は、管轄官庁への報告、調査団の設置、労働災害手当申請書類の作成など、2015年労働安全衛生法に従って義務を果たさなければならない。

2.4 情報セキュリティ
 テレワークでの業務中、労働者はフリーWi-Fiやオンラインツールを利用して同僚や顧客とやり取りをしたり、機密情報を労働者の貸与 PC だけに保存するかもしれない。社外での業務は既存のセキュリティ環境の外で行われることからこそ、情報漏えいなどの事故が発生するリスクも高まる。
 情報セキュリティを確保できるよう、雇用者は少なくとも以下の通りに法的合意書・社内規則の発行や技術面の対策を講じることを勧めたい。
– テレワーク時の情報セキュリティ確保のための規則・手順を作成する。
– 情報・データ保護に関する労働者の意識改革を目指すトレーニングを開催する。
– 社内ネットワーク・ソフトウェアを活用する。
– 保持が必要な内容、契約の有効期間、契約違反の損害賠償などに関して労働者と合意し、その条項を 含める秘密保持契約を締結する。

おわりに
 テレワークの導入にはメリットに加え、デメリットもある。コロナ禍後の社会変化に応じて柔軟かつ安全な働き方を実現できるよう、雇用者は賃金・手当、勤務時間の管理、労働災害、情報セキュリティなどに留意し、テレワークを効果的に活用していただきたい。

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