Reportレポート

輸出加工型企業がベトナム国内の他企業から加工活動を受託または委託する場合の留意点

2022/01/15

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

現在、輸出加工型企業(以下、EPE)が他企業から製品の加工を受託または他企業へ委託することが多くなっている。
下記の通り、税務上の留意点をまとめさせていただく。

ケース 1:
ベトナム国内企業が製品加工を EPE に委託する
ケース 2:
EPEが製品加工をベトナム国内企業に委託する
ケース3:
EPEが製品加工を他社の EPE に委託する
ケース4:
EPEが製品加工を国外企業に委託する
参考文献
および補足
1.
加工品を引き渡すまたは受け取る際の通関手続
・ベトナム国内企業:
EPEに製品を引き渡す際、およびEPEから加工された製品を受け取る際に通関手続きをする必要がある。
・EPE:
通関手続きをする必要がない。
・ベトナム国内企業:
EPEから製品を受け取る際、およびEPEに加工された製品を引き渡す際に通関手続きをする必要がある。
・EPE:
通関手続きをする必要がない。
製品を引き渡す側、受け取る側のどちらも通関手続きをする必要がない。 EPEは加工のために国外に製品を輸出する際、および国外から加工された製品を輸入するに、通関手続きをする必要がある。 通達
39/2018/TTB TC号の第1条第52項
2.
加工品に対する関税
ベトナム国内企業が加工のためEPEに原材料、部品を渡す際、当該原材料と部品に対して、輸出税が免税になる。EPEが加工し、国内企業に加工品を渡す際に、国内企業は下記の通り、輸入税を納税する必要がある。
・国外から輸入された部品と原材料を使わない場合、輸入税は免税となる。
・国外から輸入された部品と原材料を使う場合、国内企業は輸入した製品に使用されている原材料の価格に対して、その原材料の税率で納税しなければならない。
EPEが加工のためにベトナム国内企業に原材科、部品を渡す際、当該原材料と部品に対して、輸入税が免税になる。ベトナム国内企業が加工し、EPEに加工品を輸出する際、国内企業は下記の通り、輸出税を納税する。
・国内企業から仕入れた原材料と部品を使わない場合、輸出税は免税となる。
・国内企業から仕入れた原材料と部品を使い加工した製品に対して、当該原材料と部品が輸出税の課税対象であるか確認する必要がある。 課税対象であれば、国内企業は輸出した製品に使用されている原材料の価格に対して、その原材料の税率で納税しなければならない。
関税は免税となる 関税は免税となる ・関税
107/2016/QH13号の第16条第6、8項、第2条
・政令
134/2016/NĐCP号の第10、11、22条
・政令
18/2021/NĐCP号の第1条の第4、5、6項
3.
付加価値税 (VAT)
EPEの加工活動は、 ベトナムでの商品取引活動および商品取引に直接関連する活動に該当する。
・ 加工活動には、VAT10%が課せられる。
・ VATの申告納税には二つの方式があり、EPEは次のオプションから選択できる。
1つ目は、控除方式を適用することである。EPEはVAT10%インボイスを発行し付加価値税の規定に従って売上のVATを申告して納税する。
2つ目は、直接方式を適用することである。EPEは非関税区向けの売上インボイスを発行する。売上インボイスに記載されている価格は、すでにVAT10%が含まれている価格である。
ベトナム国内企業はEPEに対して、VAT0%インボイスを発行する。
(税率0%の取引は、国内企業にてVATの申告・納税義務があり、仕入時のVATの控除や還付が可能となる。)
VATは発生しない VATは発生しない 政令
82/2018/NĐCP号の第30条第7項
・通達
219/2013/TT-BTC号の第4条第20項、第9条、
第11条
4.
EPEの法人税(CIT)の優遇について
EPEは、国内企業向けの製品加工活動からの収益に対して、税務メリットを受けられるか?
当社の見解では、3つのケースがある。
・ケース1:当該事業が事業開始当初から投資登録証明書に登録されている場合(新規投資プロジェクト)、この収益は税制上の優遇を受ける。
・ケース2:当該事業が資本の増加を伴う拡大投資プロジェクトに補足される場合、この収益は税制上の優遇の対象になる。
・ケース3:企業が投資登録証明書(IRC)に加工活動を追加するだけで、事業規模の拡大や資本を増やさない場合は、新しく発生する加工活動に対して税務上の優遇措置が適用されているか、管轄税務局にオフィシャルレターで確認することをお勧めする。
EPEは加工を外注した製品を販売する。その場合、当該製品の販売収益は、EPEの投資プロジェクトの下での法人税の優遇措置の対象となるか?当社の見解は下記のとおりとなる。
・ケース 1:加工後の製品を輸入した後、EPEが製品の製造を継続する場合、これは輸出用の製造業の特性に応じて登録した製品の製造と見なすことができる。従って、加工品販売からの収益に対してCITの優遇措置を享受できる。
・ケース 2:製品を輸入した後、EPEが製品を販売した場合、商業活動とみなされ、輸出用の製造業の特性に適さないと見なされるリスクがある。従って、加工品販売からの収益に対してCITの優遇措置を享受できないリスクがある。
上記のケース2については法令では明確に定義されていないため、税制上の優遇措置を適用する場合には、適用根拠として管轄税務局にオフィシャルレターを送り、回答を得ることをお勧めする。
・関税
107/2016/QH13号の第16条第6、8項、第2条
・政令
134/2016/NĐ-CP号の第10、11、22条
・政令
18/2021/NĐC P号の第 1 条 の第 4、5、6 項

参考文献
– 通達39/2018/TT-BTC号
– 関税法107/2016/QH13号
– 政令134/2016/NĐ-CP号
– 政令18/2021/NĐ-CP号
– 政令82/2018/NĐ-CP号
– 通達219/2013/TT-BTC号
– オフィシャルレター81739/CT-TTHT号

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