Reportレポート

外国法人からのサービスの提供を受ける場合の税務上の留意点について

2021/07/30

  • 米国公認会計士
  • 逆井 将也

はじめに
 日本の親会社など、ベトナム国外の法人(以下、「外国法人」)からサービスの提供を受け、対価を支払う場合、税務上注意すべき点が多いため、本稿で説明する。

1.外国契約者税
 外国法人からサービスを受ける場合、ベトナム法人は外国法人に代わって外国契約者税(以下、「FCT」)を申告・納税する必要がある。FCTは付加価値税部分と法人税部分からなり、税率はサービスの内容により異なるが、例えば下記のようなものがある。

  ビジネスコンサルティングサービス、市場調査サービスなど:付加価値税5%、法人税5%が適用される。
  著作権からの収入(知的財産権、技術移転、ソフトウェア著作権など):付加価値税0%、法人税10%が適用される。

FCTはベトナム法人から外国法人に支払われたサービス料金に対して課税される。またサービス実施のためにベトナム法人が負担した費用(例:出張者の航空券代、ホテル代、食事代、交通費、個人所得税など)も課税対象となるためご注意いただきたい。

 ベトナム法人は外国法人に代わってFCTを申告・納税するため、FCT用の税コードを登録する必要がある。税コード登録は「納税義務が生じた日」から10営業日以内に行う必要があるが、「納税義務が生じた日」がサービス契約書に署名した日か、サービス料金の支払日か不明確である。そのため保守的にサービス契約書に署名した日から10営業日以内に税コードを登録することをお勧めする。FCTの納税期限はサービス料金の支払後10日以内である。ただし、出張者への航空券代などの費用をベトナム法人が支払った場合は、当該支払を行った日から10日以内に当該支払分のFCTを申告する必要があるためご留意いただきたい。

2.個人所得税
 外国法人がベトナム法人にサービスを提供するために出張者をベトナムに派遣する場合、当該出張者はベトナムで個人所得税(以下、「PIT」)を申告・納税する義務がある。出張者が暦年で183日以上ベトナムに滞在する場合、全世界所得に対して課税される。出張者のベトナム滞在日数が暦年で183日未満の場合、ベトナムを源泉とする所得に対して課税される。ベトナムを源泉とする所得を明確に計算できない場合、以下の通りベトナム滞在日数を用いて計算する。

ベトナムを源泉とする所得 =(ベトナム滞在日数/365日)× 全世界所得

 なお、上記の計算式については、四半期の申告時には分母が365日ではなく当該四半期の日数になるなど、実務上の取り扱いが異なるケースもあるため、個別の計算については専門家に確認いただきたい。
 ベトナム法人は、上記のPIT納税義務について外国法人に通知し、出張者がベトナムで働き始める少なくとも7日前にこれらの出張者に関する情報を税務当局に提供する責任がある。
 また、ベトナム法人が出張者の食事代、交通費、ホテル代などの費用を負担する場合、これらの手当てに関するPITについても申告・納税を行う必要がある。
 なお、外国法人がベトナムに出張者を派遣せず、メールや電話・ウェブサイトでの情報提供によるサービスを行う場合も、ベトナムを源泉とする所得を得ているとしてPITの申告・納税を求められることがある。ベトナム法人はこのような場合の納税義務についても外国法人に説明し、契約書にPITの負担者を明記しておくことをお勧めする。

.法人税
 外国法人に支払うサービス代金をベトナム法人が法人税上損金算入するには以下の書類が必要になる。
  -サービスの提供に関する契約書(サービスの内容・範囲、サービス料金の計算方法、FCTやPITの負担者について明記する必要がある)
  -サービスの内容やスケジュールについて外国法人と打ち合わせたメールや書類
  -出張者の航空券やホテル代を負担した場合、航空券やホテルの契約書・支払にかかる証憑
  -サービスの提供に関する書類(作業内容・担当者の記載のある日報や、行われた技術的な支援の内容について記載された書類)
  -サービスの検収にかかる議事録
  -サービス料金表、インボイス、請求書
  -2,000万VND以上の支払を行う場合、非現金決済をしたことの証憑
  -ベトナム企業がPIT、FCTを負担した場合、その申告書・支払にかかる証憑

 外国語の書類に関しては税務調査時に提示できるよう、ベトナム語版を作成・社内保管されることをお勧めする。
 サービスを提供する外国法人が、ベトナム税務上の必要書類について把握していないケースも多いため、ベトナム法人は必要な書類について正しく理解し、外国法人に依頼するようご留意いただきたい。

参考文献
-通達103/2014/TT-BTC
-通達111/2013/TT-BTC
-通達78/2014/TT-BTC

本レポートに関する
お問い合わせはこちら