重労働・有害・危険な業務を行う労働者に関する規定
2021/07/16
- Do Thi Diu
はじめに
2019年労働法および2015年労働安全衛生法は、重労働・有害・危険または特に重労働・有害・危険な業務を行う労働者の健康と労働条件を確保するために、多くの制度と権利を規定している。本稿ではこれらの制度を要約して分析する。
1.重労働・有害・危険な業務の概念
重労働・有害・危険な業務とは、 通達第11/2020/TT-BLDTBXH号において詳細にリスト化されている。このリストには、該当する業務の名前、特徴、および労働条件が明確に記載されている。企業は、このリストに基づき、実際の業務内容と比較し、重労働・有害・危険な業務を行う労働者を雇用しているか確定する必要がある。雇用している場合、以下の全ての制度を確保しなければならない。
2. 重労働・有害・危険な業務を行う労働者向けの制度
① 給与の制度
従来、政令第49/2013/ND-CP号第7条3項c点により、重労働・有害・危険な業務を行う労働者の給与は普通の条件で勤務している労働者の給与より5~7%高くする必要があるとされていた。しかし、この政令は2021年2月1日に失効し、それに代わり政令第145/2020/ND-CP号が有効になった。
2019年労働法および政令第145/2020/ND-CP号からは当該規定は削除されている。従って、企業と労働者は給与について柔軟に合意できると理解できる。
一方で、社会保険料を算出する際の基礎となる給与に関しては、重労働・有害・危険な業務を行う労働者に対して5~7%の高い給与を適用している(決定No.595/QD-BHXHの第6条)。ただし、労働法の規定と統一するために、今後、社会保険法が改正される可能性もあり、今後の法令改正にも注目すべきである。
② 労働時間の制度
2019年労働法および政令第145/2020/ND-CP号は、失効した2012年労働法にあった「重労働・有害・危険な業務を行う労働者の労働時間は一日6時間を超えてはならない」という規定を削除した。代わりに、2019年労働法第105条3項は次のように規定している。
「企業は、国家技術規則および関連する法令に適切に従い、危険な要素、有害な要素と接触する労働時間の制限を保証する責任を負う」。
このように、労働機関は、各業務の特性に応じ、企業が労働時間を柔軟に規定することを認めていると理解できる。
③ 年次有給休暇の制度
年次有給休暇の制度に関しては、2012年労働法の規定からの変更点はない。2019年労働法第113条1、2項によると、満12カ月勤務した労働者は、以下の通り年次有給休暇を付与され、年次有給休暇中は労働契約で定める賃金を享受する。
・重労働・有害・危険な業務に従事する労働者について14営業日
・特に重労働・有害・危険な業務に従事する労働者について16営業日
勤務期間が満12カ月に満たない労働者は、勤務した月数に比例した年次休暇日数を付与される。
④ 定年の制度
法令に別段の定めがある場合を除き、労働能力が低下した労働者、重労働・有害・危険な業務を行う労働者、経済・社会の状況が特に困難な場所で業務を行う労働者は、より低い年齢で定年退職することができるが、通常の労働条件での労働者の定年との差は5年以内でなければならない。2021年は、通常の労働条件の労働者にある定年は、男性の労働者について満60歳3カ月、女性の労働者について満55歳4カ月であり、その後毎年、男性の労働者について3カ月、女性の労働者について4カ月ずつ引き上げる。
また、特に重労働・有害・危険な業務を15年以上行い、労働能力を61%以上喪失した場合、2019年労働法第55条による年金受給条件を満たす。
⑤ 健康診断の精度
2015年労働安全衛生法第21条によると、毎年、企業は重労働・有害・危険な業務を行う労働者のために、少なくとも6カ月に1回は健康診断を実施しなければならない。健康診断を実施する時に、女性労働者に産婦人科の専門家による検査を受けさせなければならず、職業病のリスクのある要因にさらされている労働環境で働く人々は職業病について検査しなければならない。
⑥ 個人用保護具の制度
2015年労働安全衛生法第23条によると、危険要素・有害要素がある業務に就く労働者は、企業により個人用保護具を十分に供与され、業務実施中にそれを装用しなければならない。
企業は個人用保護具を供与する際に次の原則を守る必要がある。
a) 標準規格または国家技術基準をクリアする品質、種類、数量であること。
b) 個人用保護具貸与の代わりに現金支給をしないこと。個人用保護具の購入について、労働者に購入させない、また労働者から集金して購入しないこと。
c) 労働者の個人用保護具の装用の仕方を指導し、その装用状態を検査する。
d) 中毒や菌の汚染、放射能汚染を起こす可能性のある場所で使用された個人用保護具は、消毒、除染、放射能除去などの対策を実施する。
⑦ 現物手当の制度
2015年労働安全衛生法第24条によると、危険要素・有害要素がある環境で勤務する労働者は企業により現物手当を支給される。危険要素・有害要素を確定するために、会社は以下を実施する必要がある。
1) 労働条件の特徴や作業 プロセスおよび職場での危険要素・有害要素について分析する。
2) 怪我、病気、または労働者の健康を脅かす可能性のある職場での要因について従業員を調査する。
3) 必要な場合は、適切な機械および設備を使用し、危険要素・有害要素について分析する。
現物手当は次の原則に合致すること。
a) 体の免疫力およびデトックス(毒物排出)強化に資する。
b) 利便性と食品安全衛生を確保している。
c) シフトまたは勤務日の時間中に実施する。ただし、勤務時間中に提供できない場合を除く。さらに、通達第25/2013/TT-BLDTBXH号第2条2点に基づいて、現物手当は一日当たりに換算して、以下の金額以上である必要がある。
-レベル1:10,000VND
-レベル2:15,000VND
-レベル3:20,000VND
-レベル4:25,000VND
現物手当額はこの通達とともに発行された付録1で規定されている労働条件および労働環境の指標によって決定される。
⑧ 特定労働者グループ向けの制度および条件
・女性労働者向け
2019年労働法第137条2項によると、女性労働者は、重労働・有害・危険な業務に従事しており、かつ企業に通知した場合、12カ月未満の子を養育する期間が完了するまで、賃金および権利・利益を減少されることなく、より 軽易で安全な業務に異動し、または1日の労働時間を1時間短縮される。
・高齢労働者向け
企業は、安全な労働条件が確保されている場合を除き、高齢労働者を重労働・有害・危険な業務に配属してはならない。
具体的には、下記の全ての条件を満たした場合のみ、高齢労働者を重労働・有害・危険な業務に配属することができる。
a) 当該業務で15年間以上の職歴を持ち、かつ法律の規定に従って資格証明書を取得し、または職人として認められる高齢労働者である。
b) 医療大臣が専門の省庁の意見を受けた上で公布した健康基準に従って、重労働・有害・危険な業務を遂行するために十分に健康である。
c) 当該高齢労働者を雇用する期間は5年間以内である。
d) 一緒に業務する労働者の中に、高齢でない労働者が1人以上いる。
e) 業務に配属する際に、高齢労働者の合意を得ている。
・障がい者である労働者向け
2019年労働法第60条2項によると、企業が、その業務について十分に情報を提供し、障がい者の同意を得たうえでないと、障がい者である労働者を重労働・有害・危険な業務で使用してはならない。
・重労働・有害・危険な環境での職業学習生・職業実習生向け
2019年労働法第61条第4項によると、18歳未満の人は、芸術・体育・スポーツの分野を除き、重労働・有害・危険な業務での職業学習または職業実習を目的として企業により採用されない。
おわりに
重労働・有害・危険な業務は通常の労働条件の業務よりも困難で、厳しいことが多い。従って、企業は重労働・有害・危険な業務を行う労働者のグループ向けの上記の規制と制度を参照し、順守する必要がある。
参考文献
労働法第45/2019/QH14号(2019年労働法)
労働法第10/2012/QH13号(2012年労働法)
労働安全衛生法第84/2015/QH13号
政令第49/2013/ND-CP号
政令第145/2020/ND-CP号
通達第11/2020/TT-BLDTBXH号
通達第25/2013/TT-BLDTBXH号