出資者からの海外借入を現地法人の定款資本に変換する 「デット・エクイティ・スワップ」の手続き
2023/11/10
- 米国公認会計士
- 逆井 将也
I. 計画投資局での手続き
法令上、IRCおよびERCを変更する順序については規定されていない。ただし、ERC変更手続きは変更日から10日以内に行う必要があるため、先にこの手続きを行うことを推奨する。
ステップ 1.企業登録証明書（ERC）の内容変更登録（定款資本の増額）
・根拠：2020年企業法第30条
・期間：変更日から10日以内（デット・エクイティ・スワップ合意書の発効日を基準とする）
・提出場所：計画投資局の企業登録課
・必要書類：
| 順 | 書類 | 参考 |
| 1 | 企業登録内容変更報告書 | 通知01/2021/TT-BKHĐTの付録II-1 |
| 2 | 一人有限責任会社の場合： 所有者の決定書 |
|
| 二人以上有限責任会社の場合： ① 議事録 ② 社員総会決定書 |
||
| 株式会社の場合： ① 議事録 ② 株主総会の議決書 |
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| 3 | 定款の付録 | 社内保管 |
| 4 | 借入契約書 | 公証済コピー版 |
| 5 | デット・エクイティ・スワップ合意書 | 原本／公証済コピー版 （外国語で作成する場合、ベトナム語 の翻訳版も作成する必要がある） |
| 6 | 手続きの実施者への委任状 | |
| 7 | 手続きの実施を委任される人のIDカード |
・提出方法：以下のWebサイトで提出
https://dangkyquamang.dkkd.gov.vn/auth/Public/LogOn.aspx?ReturnUrl=%2fonline%
2fdefault.aspx
・処理期間：申請書の受領日から3営業日
・結果：新しい企業登録証明書
ステップ2. 投資登録証明書（IRC）の修正 (投資資本総額、定款資本額の増加)
・根拠：2020年投資法の第41条2項
・提出場所：企業が所在する地域の計画投資局または工業団地管理委員会
・必要書類：
| 順 | 書類 | 参考 |
| 1 | 投資プロジェクト修正申請書 | 通知03/2021/TT-BKHĐのフォームA.I.11.h |
| 2 | 修正時点までの投資プロジェクトの実施状況報告書 | 通知03/2021/TT-BKHĐTのフォームA.I.12 |
| 3 | 投資家向け投資プロジェクト修正に関する投資家の決定書 | |
| 4 | 修正内容について説明書 | |
| 5 | 現地法人の最新年度の監査済み財務諸表 | 会社の捺印があるコピー版 |
| 6 | 借入契約書 | 公証済コピー版 |
| 7 | デット・エクイティ・スワップ合意書 | 原本／公証済コピー版（外国語で作成する場合、ベトナム語の翻訳版も作成する必要がある） |
| 8 | 新しい企業登録証明書 | ステップ1の結果 |
| 9 | 現在の投資登録証明書 | 公証済コピー版 |
| 10 | 手続きの実施者への委任状 | |
| 11 | 手続きの実施を委任される人のIDカード |
・提出方法：直接提出
・処理期間：申請書の受領日から10営業日
・結果：新しい投資登録証明書
・注：企業は、IRC修正書類を提出する前に、投資法に従ってあらゆる種類の投資報告書を提出する必要がある。投資報告書が提出されていない場合、担当官はIRC修正書類を受領せずに、当該企業の情報を検査部に共有する可能性がある。その場合、検査部は会社を検査し、違反がある場合には行政罰金等を課すリスクがある。
II. 中央銀行での手続き
通知39/2016/TT-NHNN号第10条では、中長期借入は期間が 1 年を超える借入と規定されている。デット・エクイティ・スワップの対象の借入が中長期借入である場合、債務返済形式の変更とみなされるため、企業は銀行に借入変換登録手続きを行う必要がある。
ステップ3. 銀行に借入変換を登録する (中長期借入として変換される借入に適用)
・準拠：通知12/2022/TT-NHNN第17条2項、第19条
・期間：変更日から30日以内（デット・エクイティ・スワップ合意書の発効日を基準とする）
・提出場所：企業が所在する地域の中央銀行支店
・必要書類：
| 順 | 書類 | 参考 |
| 1 | 海外借入変換登録申請書 | 通知12/2022/TT-NHNNの付録04 |
| 2 | 借入契約書 | 公証済コピー版 |
| 3 | デット・エクイティ・スワップ合意書 | 現本／公証済コピー版 （外国語で作成する場合、ベトナ ム語の翻訳版も作成する必要が ある） |
| 4 | 借主の借入が保証される場合、借入の変更内容について 保証側の書面による同意書 |
公証済コピー版 （借入の保証側がいない場合、 この書類は不要である） |
| 5 | 資本の引出し・債務返済状況の口座サービスを提供した 銀行の確認書 |
|
| 6 | 修正した投資登録証明書（ステップ1の結果） | 公証済コピー版 |
| 7 | 修正した企業登録証明書（ステップ2 の結果） | 公証済コピー版 |
| 8 | 手続きの実施者への委任状 | |
| 9 | 手続きの実施を委任される人のIDカード |
・提出方法：直接提出または郵送
・処理期間：申請書の受領日から15営業日
・結果：借入の変換登録の書面による確認書
・注：借入の変換を申請する場合、デット・エクイティ・スワップ合意書の締結日から30日以内に修正済IRCを提出する必要がある。ただし、実際には、多くの会社が当合意書の締結日から30日以内にIRCを修正できず、申請書類のみを先に提出している。この場合、銀行は申請書類をいったん受領するが、会社が修正済IRCを補完してから借入の変換を承認するケースが多い。
実務上、各地域の規制に応じて、異なる書類の補完を要求するケースが多い。手続きを円滑に進めるために、関係当局への確認やコンサルティング会社等のサポートを求めることを推奨する。
本レポートを通じて、デット・エクイティ・スワップの手続きについてご理解いただき、会社の効率的な運営に役立てていただきたい。
参考法令
・2020年企業法
・2020年投資法
・通知01/2021/TT-BKHĐT号
・通知03/2021/TT-BKHĐT号
・通知39/2016/TT-NHNN号
・通知12/2022/TT-NHNN号
以上
