ベトナムの外国契約者税④税務調査で指摘を受けやすいポイント(その2)
2021/07/16
- 米国公認会計士
- 逆井 将也
はじめに
前回に続き、本稿では外国契約者税(以下、FCT)について、税務調査で指摘を受けやすいポイントを説明する。前回は直接会社の事業活動に関わる取引を中心とした内容だったが、本稿で紹介する内容は、社内内部向けに発生する取引を中心とした内容となっている。本稿を通じて FCT への理解を深めていただければ幸いである。
1.税務調査で指摘を受けやすいポイント
1.1.税務調査で指摘を受けやすいポイント
法令上ベトナム国外の航空会社がベトナム国内で航空券を販売する場合、当販売からの売上はFCT課税対象となる。そのため、国外航空会社から航空券を購入するベトナム法人やベトナム国内の旅行代理店はFCTを申告納税しなければならない。税率は、国際線の場合2%(法人税<以下、CIT>部分2%、付加価値税<以下、VAT>部分なし)、ベトナム国内線の場合5%(CIT部分2%、VAT部分3%)となる。たとえば、ベトナム法人が日本の航空会社から直接航空券を購入した場合は、航空会社に航空券代を支払う際にFCTを計算し、申告納税手続を行う必要がある。
ベトナム法人がベトナム国内の旅行代理店を通じて航空券を購入する場合、旅行代理店が国外航空会社から航空券を購入する際にFCTが課されるため、ベトナム法人はFCTの計算および申告納税をする必要がない。
ベトナム法人がベトナム国外にある旅行代理店を経由して航空券を購入する場合、 法令上は明記されていないが、FCTの原則から考えると、ベトナム法人がFCTを計算した上、申告納税することを要求される可能性は高い。
以上より、ベトナム法人が航空券を購入する際には、できる限りベトナム国内の旅行代理店を通じて購入することをお勧めする。
1.2.外国法人が提供する研修サービス
FCTはベトナム国内で外国法人がサービスを提供した場合に課税される税金である。そのため、外国法人がベトナム国内の現地で研修サービスを行う場合はFCTの課税対象となることはもちろんのこと、WEBトレーニングについても研修を受ける労働者がベトナム国内にいる限りFCTの課税対象となってしまうため注意すべきである。税率は10%(CIT部分5%、VAT部分5%)となる。
なお、ベトナム法人の労働者を日本法人に研修生として派遣する際のように、研修をベトナム国外で実施する場合はFCT課税対象外となるが、将来の税務調査で説明できるよう、以下の書類を予め準備しておくことを推奨する。
(1) 研修場所が明記された契約書
(2) 研修時に国外へ行ったことを証明するインボイス(航空券代、ビザ代等)
(3) その他関連書類(出張の決定書、航空券の半券等)
1.3. 外国法人がベトナム法人のために加入する各種保険
外国法人がベトナム法人のためにベトナム国外で各種保険(生産物品質保険・賠償責任保険・環境保険・リコール費用保険等)に加入し、保険加入費用をベトナム法人に対して請求する場合、外国法人による保険サービスの提供とみなされFCTが課される。ベトナム法人は、外国法人へ保険加入費用を送金する際に、FCT10%(CIT部分5%、VAT部分5%)を源泉徴収した上、申告納税手続を行う必要がある。
グループ会社に対するリスク・マネジメントを目的として、親会社がベトナム子会社のために行う場合が想定されるが、ベトナム子会社がベトナム現地で直接保険に加入することでグループ全体のFCT負担額を抑えることができるため検討いただきたい。
1.4. 誤った税コードの使用
通常ベトナム法人には、1 つのTAXコード(税番号)が与えられ、CITやVAT等はこのTAXコードを使用して申告納税手続を行う。ただし、FCTの申告納税手続の際には、FCT用のTAXコードを使用しなければならない。FCT 用のTAXコードではなく通常の TAXコードを使用して申告納税を行った結果、税務調査の際にFCTの申告納税漏れと勘違いされてしまうケースがあるため注意いただきたい。万が一、誤ったTAXコードを使用した場合でも税務局へ説明をすれば理解してもらえる可能性は高いが、時間と手間を要してしまうため、申告納税時にはしっかり確認することをお勧めする。
おわりに
これまで全4回にわたり、FCTの基本事項と実務上の留意点について述べてきた。FCTは課税対象取引が幅広く、税率も取引により異なるため理解しにくいが、原則は外国からサービスを受けた際に発生する税金であることを認識いただきたい。また、外国からのサービスに該当するか明確に法令上規定されておらず、税務局の解釈による場合もあるため、不明確な場合には弊社等の専門家にも適宜確認いただくことをお勧めする。