政令152/2020/ND-CPに基づく外国人労働者の労働許可証免除制度について
2021/05/20
- 米国公認会計士
- 逆井 将也
はじめに
2020年12月30日に、2019年労働法45/2019/QH14号(以下「2019年労働法」の細則規定として政令152/2020/ND-CP号(以下「政令152号」)が公布され、2021年2月15日より有効となった。政令152号では、ベトナムで就労する外国人(以下「外国人労働者」)の労働許可証取得要件や発給手続きについての規定の他に、労働許可証免除についての詳細規定も定められている。本稿では、外国人労働者の労働許可証免除にかかる規制の概要とその手続きの種類、および実際の手続きの進め方について説明する。
1.労働許可証の免除対象
2019年労働法第154条および政令152号第7条によると、労働許可証免除を適用できる対象として20種類が規定された。免除される事由により労働許可証免除手続きは、労働許可証免除申請手続きを実施しなければならない場合と通知のみで良い場合に分かれる。以下に挙げるものは、適用されることが比較的多い免除事由と必要な手続きの分類である。
労働許可証免除申請手続き対象 | 労働許可証免除通知手続き対象 |
WTO(世界貿易機関)サービス分野公約に基づき段階的市場開放が合意された11のサービス分野について、企業内異動により赴任する外国人 | a) 販売活動のためにベトナムに滞在するがその期間が3カ月未満の者 b) 弁護士法の規定に基づき、ベトナムで弁護士業許可書の発給を受けた外国人弁護士 c) ベトナム人と結婚し、ベトナムに在留する外国人 d) 払込資本金が30億ベトナムドン以上の有限責任会社の所有者または出資者 e) 30億ベトナムドン以上の価値を有する株式会社の取締役会会長または構成員 f) 1回のベトナム滞在期間が30日以下かつ入国回数が年3回までの管理者、マネージングディレクター、専門家、熟練技術労働者 |
2.労働許可証免除申請手続き・通知手続き
2.1. 労働許可証免除申請手続き
労働許可証免除申請手続きは、労働許可証取得申請と同様に2つのステップを実施しなければならない。
ステップ①:外国人労働者採用承認の取得
企業は、政令152号の所定フォーム01/PLIを利用し、外国人の採用を希望する職位に関する情報を申告する。申請書類は、勤務開始日より少なくとも30日前に労働省または中央直轄市人民委員会に提出しなければならない。
申請を受理した機関は、有効な申請書類を受け付けた日から10営業日以内に、外国人労働者採用の可否について書面で回答する。
ステップ②:労働許可証免除証明書の取得
企業は、外国人労働者の勤務開始日より少なくとも10日前に、労働管轄機関に以下の書類を提出しなければならない。
a) 労働許可証免除申請書(政令152号の所定フォーム09/PLI)
b) 規定された病院等の組織により過去 12 カ月以内に発行された健康診断報告書
c) 外国人労働者採用の承認書(ステップ①の結果)
d) 有効期限内のパスポートの公証コピー
e) その他の証明書類(任命状など、申請カテゴリーにより異なる)
上記の b) c) e)は原本または公証コピーが必要とされる。また、海外で発行された書類については、発行国のベトナム大使館・領事館などで領事認証を取得して提出するとともに、翻訳公証も提出しなければならない。
申請を受理した機関は、有効な申請書類を受理した日から5営業日以内に、企業に対し「労働許可証免除証明書」を発給する。労働許可証免除証明書の有効期間は、新規申請の場合も、再発行の場合も最長2年間となる。政令152号では、再発行申請回数に制限が設けられていないため、外国人労働者が条件を満たしていれば、企業は同一の人物について何度でも免除申請ができると考えられる。
2.2. 労働許可証免除通知手続き
これは政令152号で新たに制定された手続きである。ほとんどの場合通知書類を提出するのみで済むため、労働許可証免除申請手続きと比較すると簡易な手続きとなっている。ただし「弁護士法の規定に基づき、ベトナムで弁護士業許可書の発給を受けた外国人弁護士」および「ベトナム人と結婚し、ベトナムに在留する外国人」については、通知書類の提出に先立って「外国人労働者採用承認の取得」(上記の 2.1 労働許可証免除申請手続きのステップ①)を実施する必要がある。
申請書類は、外国人労働者の勤務開始日より少なくとも3営業日前に労働省または労働管轄機関に提出しなければならない。
政令152号では、通知書の所定フォームもその他必要書類も規定されておらず、また本稿執筆時点において細則規定通達も発行されていない。したがって、企業が現時点でこの手続きを実施する際には、外国人労働者の氏名、年齢、国籍、勤務先企業名、勤務開始日などの情報を記載した通知書を自社で適宜作成して提出すればよいと考えられる。政令152号では追加書類の規定はないが、例えば「ベトナム人と結婚し、ベトナムに在留する外国人」については婚姻登録証明書の公証済みコピーを、また「有限責任会社の所有者または出資者」については、出資者と払込資本金額が記載された書類・パスポート等の公証済みコピーなどの証明書類を提出する必要があると思われる。
おわりに
本稿では、政令152号の規定および弊社が関連機関と直接確認を行った内容に基づき、ベトナムで就労する労働許可証免除対象の外国人労働者に対する規制や免除手続きについて説明した。政令152号では、2019年労働法の労働許可証免除規定が明確かつ具体的に案内されており、企業および外国人労働者側で手続きを進められるようになったといえよう。ただし、各地域の当局担当者によって法令の具体的な解釈や実務手続きは異なる可能性があるため、手続きを実施する際に事前に管轄の関連機関に確認する必要がある。
参考文献
-2019年11月20日付労働法45/2019/QH14号
-2020年12月30日付政令152/2020/ND-CP号