外国人労働者を現地採用する際の留意点
2021/04/23
- 米国公認会計士
- 逆井 将也
はじめに
外国人労働者に関しては、採用時の手続き、社会保険、個人所得税などベトナム人の労働者を雇用する場合と取り扱いが異なる点が多いため、以下で説明する。
1.採用時の手続き
企業は、ベトナム人労働者の採用では生産およびビジネスのニーズを満たすことができない場合に限り、管理者、専門家および技術者として外国人労働者を採用することができる。
外国人労働者を使用する予定日より30日以上前に、企業は外国人労働者を採用することの必要性を説明し、労働局から書面による承認(外国人労働者使用の承認書)を得る必要がある。
外国人労働者使用の承認書の取得後、外国人労働者を使用する予定日から15日以上前に、会社は労働許可証の申請を行う。労働許可証の有効期限は最大2年間となる。
労働許可証の取得後、労働契約を締結する。労働契約の期間は労働許可証の期間と同じにすることが多い。労働契約書に記載する給与の通貨はVNDでもUSDでも問題ない。
労働契約書の締結後、労働契約書のコピーを労働局へ提出する必要がある。労働契約書の期間について、ベトナム人労働者は有期契約の更新は1回までだが、外国人労働者は特に上限無く有期契約を更新できる。
労働許可証取得後、会社は労働者に長期滞在許可証(レジデンスカード)を申請する。当有効期間は労働許可証の有効期限内となる。
2.保険料率
2014年社会保険法、政令No.143/2018/NĐ-CP、決定No.595/QĐ-BHXHの規定より保険料率を以下の通りまとめる。
加入期間 | 会社負担分 | 外国人労働者負担分 | 合計 | ||||||||
社会保険 | 労働災害/ 職業病 |
失業 保険 |
健康 保険 |
社会保険 | 労働災害/ 職業病 |
失業 保険 |
健康 保険 |
||||
退職/ 死亡 |
病気 | 退職/ 死亡 |
病気 | ||||||||
2018年 12月1日以降 |
– | 3% | 0.5% | – | 3% | – | – | – | – | 1.5% | 8% |
2022年 1月1日 以降 |
14% | 3% | 0.5% | – | 3% | 8% | – | — | 1.5% | 30% |
上記の通り、2022年1月1日以降、外国人労働者の退職・死亡保険への加入義務が生じる。
また、外国人労働者は失業保険に加入しないため、退職時に国から失業保険金の給付を受けることができない。一方、会社は労働者に失業保険に加入していない期間の退職金を支給する義務があることから、外国人労働者に対しても会社が退職金を支給する義務があると解釈されることもあるため、ご注意いただきたい。
なお、労働契約書を締結後した月の労働日数が14日未満の場合はその月の社会保険料の支払いは必要ない。
3.個人所得税
外国人の個人所得税を決定する際には、居住者・非居住者の区分に応じて課税所得や税率が異なる。
ベトナムに年間183日以上滞在している、またはベトナムで年間183日以上の賃貸契約を有している外国人はベトナム居住者となり、ベトナムでの所得だけでなく、全世界で生じた所得が課税所得となる。
また居住者の場合、個人所得税率は5~35%の累進課税となる。
上記以外の外国人は非居住者となり、ベトナムを源泉とする所得に対して課税され、個人所得税率は20%となる。なお、ベトナムを源泉とする所得については、ベトナム現地法人から支給される給与から算出する方法、全世界で生じた所得をベトナムに滞在した日数で割り返して算出する方法などがある。
4.組合経費の納付政令
No.191/2013/ND-CP の規定により、会社は労働者の社会保険料の算出基礎となる給与額の2%の金額の組合費を支払う義務がある。
外国人労働者に関しても、労働契約書を締結している場合には組合経費の支払い義務が生じる。
おわりに
以上、外国人労働者を採用する際の留意点についてまとめた。社会保険や個人所得税など、ベトナム人の労働者を雇用する場合と取り扱いが異なるものも多いため、ご注意いただきたい。
参考文献:
2020年12月30日付の政令152/2020/ND-CP号
2014年11月20日付の社会保険法58/2014/QH13号
2018年10月15日付の政令143/2018/NĐ-CP号
2017年4月14日付の決定595/QĐ-BHXH号
2013年8月15日付の通達111/2013/TT-BTC号
2014年1月14日付の政令191/2013/ND-CP号