Reportレポート

改正労働法の「休憩時間」の規定について

2021/02/15

  • Pham Thi Ut

はじめに
 就労時間・休憩時間は重要な内容であり、就業規則と労働契約の基本的な項目である。2012年労働法(“旧法”)と比較して、2019年労働法(“改正法”)は休憩時間に関し新しい規定がある。2020年12月14日に最初の改正法のガイドラインとして政令145/2020/ND-CP(政令145)が発行された。政令145では休憩時間の考え方が詳しく案内されているため、本稿で解説させていただく。

1.有給休憩時間
1.1 労働時間中の有給休憩
 労働者がシフト制で勤務する場合、昼間のシフトにおいて少なくとも30分の有給休憩を取ることができ、深夜シフトにおいて少なくとも45分の有給休憩を取ることができる。また深夜シフトとは22時から翌日6時までの間に3時間以上の勤務があるシフトと定義されている。
「シフト制」は旧法では定義されていなかったが、政令145では以下の通り明確化されている。シフト制は1日(連続24時間)の間で少なくとも2人または 2 組を同じ作業、位置で交代で作業するように配置することである。
シフト制の有給休憩とみなされるためには、下記の2つの条件を満たす必要がある。
a) 勤務期間が6時間以上;
b) 2つの隣接する勤務シフト間の交替時間は45分を超えない。
つまり、シフト制でない勤務、またはシフト制だが上記2つの条件を満たさない制度であれば、労働時間中の休憩を有給で付与する必要がない。

1.2. 女性労働者の有給休憩
 女性労働者は、生理期間中は1日30分、12か月未満の子の養育期間中は1日に60分の有給休憩を取ることができる。 生理期間中に有給休憩を取得できる日数は会社と労働者の間の合意次第で、少なくとも3日間となる。本規定は旧法と同じである。
 実務上は、労働者が上記の有給休暇を取得するニーズがないケースもある。旧法では、この場合未消化の休憩時間をどのように扱うか不明であったが、政令145では明確に規定されている。「女性労働者が生理期間中と子の養育期間中の休憩を取るニーズがなく、かつ雇用者側が労働者が休憩せず勤務することに合意する場合、通常の給料に加えて休憩すべき期間の勤務に対して該当給与を支給される」と定められている。この勤務期間は残業と見なされず、100%の給与で支払われる。
上記の規定に基づいて、会社は女性労働者の有給休憩の申請手続きなどを社内規定に詳しく定めるべきである。

1.3.健康診断の時間
 政令145に基づいて、雇用者の手配・指定による健康診断などの時間も就労時間と見なされる。旧法では健康診断の時間が就労時間となるかどうかが不明確だったため、実務上は会社が土・日などの週休日に健康診断を手配するケースが多かった。しかし政令145により、週休日に健康診断を行う場合、残業と見なされて残業代を払わなければならないと解釈できる。

1.4. 旧法から削除された有給休憩
<高齢労働者の休憩時間>
 旧法の下では、高齢労働者に対して定年前の1年間は、就労時間を1日60分短縮する必要があった。改正法及び政令145では本規定が削除された。つまり、高齢労働者に対する就労時間の短縮は不要となっている。

<1日10時間以上勤務の労働者に対する有給休憩>
 旧法の下では、残業時間を含めて1日10時間以上勤務した労働者に対して、30分の有給休憩を追加で付与する必要があった。改正法及び政令145では本規定が削除された。つまり、就労時間中の有給休憩は上記 1.1.項の時間のみであり、その他の途中休憩は無給として扱う。

2.無給休憩時間
 雇用者は、6時間以上勤務する労働者に対して連続30分(深夜勤務の場合連続45分)の休憩時間を付与する必要がある。1.1項に述べるシフト制の労働者以外、無給休憩として扱う。
 上記の休憩時間以外にも、雇用者は短い休憩時間を設定し、それを就業規則に記載する。この短い休憩時間の長さは法律に定められていないが、5分~10分の休憩を設定することが一般的である。

3.週休
 週休の規定は旧法と比較して変更がなく、以下の通りである。
毎週、労働者は少なくとも連続24時間の休憩を取ることができる。 労働の周期により週休が取得出来ない特別な場合、雇用者は労働者が月平均で、少なくとも4日の休息の取得を保証する責任を負う。雇用者は、週休を日曜日又はその他の一定の曜日に定める権利を有するが、就業規則に記載しなければならない。

4.祝日、正月休み
① 労働者は以下の祝日、正月に有給で勤務を休むことができる。
• 陽暦の正月:1日(陽暦の1月1日)
• 旧正月(テト):5日(毎年、政府が休暇計画を決定する。旧法では陰暦の大晦日と年初4日間、または年末2日間と年初3日間のいずれかを雇用者が選択できることとなっていた。)
• 戦勝記念日:1 日(陽暦の4月30日)
• メーデー:1 日(陽暦の5月1日)
• 建国記念日:2 日(陽暦の9月2日及び前日もしくは翌日であり、毎年政府が休暇計画を決定する)
• フン王忌日:1 日(陰暦の3月10日)

② 上記祝日が週休と重なった場合、労働者はその翌日を代休とすることができる。この場合、重なっている日は祝日で、その翌日を週休日と考える。祝日または代休日に残業した場合、残業代の計算に影響を与えるため留意されたい。

③ 労働者がベトナムで就労する外国人の場合、上記の休日のほか、その民族の伝統的正月に1日、および建国記念日に1日休むことができる。

5.私的な休暇
 私的な休暇の規則とは、個人的事情及び家族の事情のため、労働者が休むことができる規則のことである。労働者は以下の場合に有給で私的な休暇を取得することができる。
• 結婚:3日
• 子供(養子を含める)の結婚:1日
• 父母、義理の父母(養父・養母を含める)、配偶者及び子供(養子を含める)の死亡:3日
 労働者は、父方の祖父母・母方の祖父母もしくは兄弟姉妹の死亡、父又は母の結婚、兄弟姉妹の結婚の場合、無給休暇を 1 日付与されるが、雇用者に通知しなければならない。つまり、上記の場合には雇用者の合意を取得する必要がなく、通知すれば良い。他の場合は、無給休暇を取得するために、労働者は雇用者の合意を取得しなければならない。

おわりに
 休憩時間の規定は重要であり、会社が就業規則・労働契約書の作成及び労働者の勤務スケジュールの設定を効果的に行うため、内容を十分に把握すべきである。本稿で解説した内容以外では、年次有給休暇、残業なども就労時間・休憩時間に関連する重要項目である。こちらは別のレポートで解説させていただく。

参考資料
1.2019年労働法
2.政令145/2020/ND-CP
3.2012年労働法
4.政令45/2013/ND-CP

本レポートに関する
お問い合わせはこちら