2020 年投資法における外国投資家が出資等を行う際の条件や手続きについて
2021/01/18
- 米国公認会計士
- 逆井 将也
はじめに
2020年投資法は2021年1月1日より発効し、事業内容及びベトナムにおける外国投資家の投資にかかる条件・手続きについて規定している。本稿では、その内容について説明する。
1.事業内容
a. 投資禁止事業及び条件付事業
2020年投資法では2つの投資禁止事業が追加、22の条件付事業が削除された。
削除された条件付事業の中で、注目すべきはロジスティクスサービス事業である。現行法により、この事業内容を実施するために、外国投資家は政令 163/2017/ND-CPに規定される条件を満たさなければならず、詳細な業務内容に応じて外国投資家の出資割合が制限されているが、2020年投資法により、この条件が削除されると理解できる。しかし、現時点では詳細な案内文書が発行されないので、慎重に専門家や当局に確認することをお勧めする。
b. 外国投資家に対する市場アクセス制限事業及び投資の条件
外国投資家に対する市場アクセス制限事業は2020年投資法で導入された新しい概念である。現時点で詳細の規定はまだ発表されていないが、国会の決議等に基づき、今後、政府は以下の2つのグループからなる一覧を発表することが見込まれる。
1) 市場アクセスが禁止される分野の事業一覧
2) 条件付で市場アクセスが認められる分野の事業一覧
市場アクセス制限事業に外国投資家が投資をするための条件は、定款資本金の所有割合、投資形態、活動範囲、投資家の能力及び投資活動に参加するパートナーに関するものとなる。また、今後追加の条件も発表される可能性があり、それらも遵守する必要がある。
2.出資等の条件と手続き
a.条件
2020年投資法によると、外国投資家が他の経済組織に対して出資・株式購入・持分購入(以下、「出資等」)をするためには、以下3つの条件を満たさなければならない。
1)外国投資家に対する市場アクセス条件(上述の1項b点)
2)国防・治安維持上問題がない
3)土地使用権の受領条件、諸島部、国境地方、沿岸部地方の土地使用条件についての土地に関する法令を遵守している
b.手続き
2020年投資法第26条に基づき、外国投資家は、以下3つの場合には出資等を行う前に、経済組織の出資・株式購入・持分購入の登録手続き(以下、「登録手続き」)を実施しなければならない。
ケース 1: 出資等により、条件付市場アクセス制限分野の事業を行う経済組織における外国投資家の出資割合を高める場合
例えば、条件付市場アクセス制限分野の事業を行う二名以上有限会社が増資し、外国投資家の出資割合が増える場合に、登録手続きを実施する必要がある。
また、条件付市場アクセス制限分野の事業を行う一名有限会社の所有者が増資する場合には、所有割合が100%→100%と変更がないため、登録手続きを実施する必要がない。
ケース 2: 出資等により、外国投資家の出資割合が増加し、かつ出資後の出資割合が定款資本の50%以上になる場合
例えば外国投資家Aと外国投資家Bの資本金所有割合は60%と40%であり、外国投資家Aが増資を行う場合、登録手続きが必要である。
一方で外国投資家Bが増資を行うが、出資後の所有割合が50%を超えない場合には登録手続きを実施する必要はない。
ケース 3: 外国投資家が諸島部、国境地方、沿岸部及びその他の国防・治安維持に影響を与える地方の土地使用権証明書を持っている経済組織に出資等をする場合
以上の3つのケースに加えて、実務上は、投資家の国籍が変わる場合なども登録手続きの実施が求められる可能性があるためご留意いただきたい。
(例):二名以上有限会社における投資家 A(日本)と投資家 B(日本)の資本金所有割合は60%と40%である。投資家 A はタイの投資家に資本金の 20%を譲渡すると決定した。この場合、上記の3つの場合には該当しないものの、実務上は投資家の国籍が変わったため登録手続きが求められるケースが多い。
登録手続きは、外国投資家の出資等の可否を決定するにあたって重要な手続きであるため、十分な知識を持つ専門家に確認して進めることをお勧めする。
おわりに
本稿では、投資が禁止・制限されている事業内容および、外国投資家が出資等を行う際の2020年投資法の規定をまとめた。現時点では、これらの規定の詳細については明確な案内が出されていないため、政令・通達などの詳細規定にも注視する必要がある。
参考文献
1.2020年投資法 61/2020/QH14号
2.2014年投資法 67/2014/QH14号